古都の初詣帰りは巨大綿菓子で…「インスタ映え」すると人気
いよいよ2018年。初詣といえば、幼い頃にキャラクターが印刷された綿菓子の袋にわくわくした思い出を持つ人も多いのではないだろうか。すぐに開けてしまっては持ち歩く楽しみがなくなるし、家に帰って開けてみれば小さくしぼんでしまっている。うれしかったはずの綿菓子に、なんとなく切ない思い出をお持ちの方に、朗報の綿菓子店がある。
近鉄奈良駅から南へ5分ほど、最近観光客の増加で活気づく奈良町へとつづく「もちいどのセンター街」から東へ一筋入った路地に、今夏オープンしたPamba pipi(パンバピピ)。スワヒリ語で綿菓子の意味の名前の店は、市民をはじめ、旅の思い出にインスタグラム用の写真を撮りたいという外国人観光客にも人気だ。理由のひとつはその「巨大さ」と「見える化」。縁日の綿菓子袋はたいてい不透明で綿菓子が見えず、袋の模様がほぼ唯一の選択基準だったが、パンバピピの綿菓子は、大人の頭二つ分以上もある巨大な綿菓子を、透明のかわいいラッピングで仕上げてくれる。
店内にはインスタ映えする黒板とインスタフレームも置いてあるので、その場で食べたい人もすぐに撮影ができる。もうひとつの理由は、素材へのこだわりとフレーバーの多さ。綿菓子の元になる砂糖は、奈良町で安政元年(1855年)創業の老舗「砂糖傳増尾商店」から、キメ細かく仕上げるために「鬼ザラメ」を特別に入手。現在、砂糖傳の砂糖を使った綿菓子が食べられるのはここだけだ。
さらにメニューは季節限定と定番をあわせて常時十数種類と豊富。大和抹茶、ほうじ茶、梅酒や酒かす、ゆず、ラズベリーなどのパウダーはすべて香料ではなく本物をフリーズドライしている。食べてみると素材の風味がしっかり残っている。もちろん梅酒などアルコールを使った商品は大人限定だ。注文してから2~3分かけて1個ずつ作ってくれるので、仕上げのパウダーをかけるときには素材の香りがほんのりと店内に広がる。
奈良町に生まれ育った店主の小林聡さんは、「綿菓子の思い出ですか? 実はないんですよ(笑)。なかったから余計にこの町にあったらいいなと」と、打ち明ける。しかし以前から、奈良には食べ歩きができる商品が少なく、せっかく来てくれた観光客に楽しんでもらえるものを考えていたと言う。大きすぎて食べきれない、電車で持ち帰りにくい、すぐに買いたいという人向けのカップ入りの新メニューもインスタ映えする仕上がりになっている。
熱で溶かした少量の砂糖を高速で回転させ、遠心力で吹き飛ばしながら割り箸などで回収してふわふわにする綿菓子は、子どものころ夢のようなお菓子だった。春日大社など世界遺産の多い奈良で初詣を済ませたあとは、なつかしくて新しい綿菓子を持ち歩きながら、久しぶりに夢をふくらませてみてはいかがだろうか。(デイリースポーツ特約記者・鹿谷亜希子)