いま最もチケットが取りづらいプロレス 「ドラゲー」が超人気な理由
一時の低迷を脱出した感のある日本のプロレス界。だが、それに先んじて人気をキープし続けている団体がある。神戸で旗揚げして14年。若い女性ファンから圧倒的な支持を受けている「ドラゴンゲート」がそれだ。百聞は一見にしかず。大阪での試合会場に潜入してみた。
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開場前からエディオンアリーナ大阪第2競技場はギャルの熱気に包まれていた。これだけでオヤジ記者は落ち着かないが、グッズ売り場をのぞくと選手の名前やイラストが入ったTシャツ、マフラータオル、カラフルなマスクなどが飛ぶように売れていく。
主催者によると、開催数は年間平均190を超え、業界最多。老若男女に幅広く支持されており、男女比は6割が女性。年代では20~30代が7割近くを占める。京都在住の大学生、藤田彩吹花さん(20)もドラゴンゲートに魅了されている一人だ。
「お父さんの影響で初めて観たのは幼稚園のとき。メキシカンスタイルの飛び技が多く、試合展開がスリリング。選手のマイクパフォーマンスもおもしろく、月2回は観に行ってますよ。通算では100回を超えているかも」
場内に入るとアイドルのコンサートにでも迷い込んだかのよう。派手な光に照らされ、まぶしくてしょうがない。しかし、ゴングが鳴って分かった。人気の秘密は、このエンターテインメント性とアクロバチックでスピーディーな動き。比較的小柄で鍛え抜かれた選手が多く、プロレスのイメージが変わった、という人が多いのもうなづける。腹の出た緩慢な動きのレスラーは皆無、われわれオヤジ世代が子供のころ観た流血戦がほとんどないのも特徴だ。
いまのプロレス業界は全体でも一時の不振から立ち直り「プロレス女子」「プ女子」という言葉が浸透するほど若い女性の支持を得ているという。ただ、団体のエースでデビュー12年目のYAMATOは「われわれのところは昔から女性ファンが多かった」と自負。「お客さんの感情を引き出して、お客さんを本気で泣かせ、本気で笑わせる。それが存在意義」と言う。得意技はスリーパーホールド、関節技。「技自体は地味なので、どういう見せ方をするか」とプロ意識は高い。
気になるチケットのこの日の値段は前売りで特別リングサイドが7560円。以下6480円~2160円まで全部で6種類あり、比較的良心的だ。これまでに毎日放送、東海テレビ、テレビ西日本、テレビ和歌山などの地上波で放映。レギュラー番組を持つCS「GAORA」はこの日も中継に来ており、赤岩海プロデューサーチームリーダーは「長いつき合いですし、ファンをがっちり獲得している」と話す。
主な興行場所は大阪、神戸はもちろん、福岡、名古屋など。特に東京・後楽園ホールでの大会は「スキャンダラスな後楽園」と言われ、立ち見席でさえ入手が困難だとか。また和歌山で定期的に興行するなど地方にも積極的だ。さらに、アメリカ、ヨーロッパ、中国と海外にも進出。最近では香港でも人気を誇り、単独興行を打つ計画もある。
「キッド!」「オウジ、しっかり!」。館内は女性の熱い声援が飛び交う。カードによっては大相撲の「しょっきり」のような笑いあり、ときに女性ファンも飛び入り参加しての股さきの刑あり、ちびっこがゴングを鳴らしたりとファンとの距離が近いのも特徴だ。
「選手が若くてイケメン。キャラも豊富でコスチュームも華やか。戦いにストーリー性があって、次も観たくなる」とは通の女性。今年も7月22日に兵庫・神戸ワールド記念ホールで開催される総決算「KOBEプロレスフェスティバル」を頂点に、ファンにはたまらないカードが展開されていく。(デイリースポーツ特約記者・山本智行)