【プロ格闘ゲーマーの肖像1】「世界初の夫婦」ももちとチョコ
「プロゲーマー」への注目が日本でも高まってきた。対戦型コンピューターゲームを競技とする「eスポーツ」が五輪種目候補となるなど、マニア層以外も無視できない世界になっている。そんな背景の中、格闘ゲームに特化した大会で活躍するプロ格闘ゲーマーの先駆者をはじめ、独自のスタイルで生きる人たちを紹介する。
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何事も突き詰めれば「生業(なりわい)」となる。世界各地の大会で観衆を前に卓越した技でゲームする姿を見せ、賞金やスポンサーからの報酬などで生計を立てるプロゲーマー。そんな彼ら彼女らが3月初旬、都内で行われた格闘ゲーマー同士の結婚披露パーティーに出席していた。
新郎は「どぐら」、新婦は「ぎゃす」。昨年9月に入籍し、第1子の長女が誕生した夫婦の門出を祝う仲間の中には、世界初のプロ格闘ゲーマー夫婦がいた。「ももち」と「チョコブランカ(以下チョコ)」だ。ももちは2014年から2年連続で世界王者に輝いたトッププロ。チョコは日本人女性初のプロ格闘ゲーマー。名古屋を拠点に活動し、11年にプロとなった。14年、名古屋から東京に移住してゲーム専業に。16年1月に入籍した。
ももちは「彼ら(どぐら&ぎゃす)の場合、お子さんもできて自分たちにはない大変さがあると思います」と思いやりながら、「結婚している方がどんどん増えて、プロゲーマーという職業が認められつつある。時代の流れを感じています」と実感を込めた。
3月から公開中のドキュメンタリー映画「リビング・ザ・ゲーム」では1年半に渡って2人の日常生活に密着している。「1/60秒の世界」を追求するももち。ゲームに生きる夫婦の喜怒哀楽や葛藤が描かれる。上映後のトークショーで、チョコは「東京に出てきた時点で、私は最後までこの人と走り続けるだろうと思った」と振り返り、「実は去年、引退を考えたのですが、もう1度輝きたい。ももちを倒したいですね」と笑顔を見せた。
これからも“ももチョコ”は二人三脚で走り続ける。(デイリースポーツ・北村泰介)
◆ももち 86年生まれ、愛媛県出身。本名・百地祐輔。14年にウルトラストリートファイターIV公式世界大会、15年にEVO2015を制する。イベントや後進育成などを手掛ける会社「忍ism」の代表取締役。17年から米プロチーム「Echo Fox」に夫婦で移籍。
◆チョコブランカ 86年生まれ、兵庫県出身。本名・百地裕子。陸上のやり投げ選手として兵庫・龍野高校から名古屋の大学に進み、格闘ゲームを本格的に始める。米国では「レディー・ビースト」の愛称で知られる。