酒屋の中で酒が飲める「角打ち」スタイルが人気!ファン拡大の突破口に
酒屋の店内に設けられたスペースで立って酒を飲むことを「角打ち(かくうち)」という。「角打ちに集まるのはオジサンだけ」という考えはもう古い。いま、若者や女性一人でも楽しめる酒屋が増えている。
2014年12月に1号店(大阪市北区)、2016年7月に2号店(京都市南区)をオープンした浅野日本酒店は、「角打ち」スタイルの酒屋だ。スタンディングのカウンターを設置し、厳選した全国の日本酒を45ml・300円~という価格で提供している。その数、常時100種類以上。飲んで気に入れば自宅用にも購入でき、逆に酒を買いに来たついでに1杯飲んで帰るという楽しみ方もできる。
また、商品を購入する際には全種類を無料で試飲できるのもうれしいサービスだ。オーナーの浅野洋平さん(43)はこのような店にした理由を「一人でも多くの方に日本酒の美味しさ、楽しさを伝えたかった」と話す。「角打ちの魅力は、気軽に立ち寄りやすいこと。また、従来の酒屋のように商品を売って終わりではなく、お客様とコミュニケーションをとることで店のファン作りにもつなげています」。同店では何度も足を運んでもらえるよう、週替わりで酒蔵フェアも実施している。
京都で約100年前に創業した酒屋が「角打ち」を取り入れたケースもある。2016年12月に新規オープンしたSAKE CUBE KYOTO(京都市中京区)だ。冷蔵庫や棚に並べられた日本酒を客は自由に見て選び、グラスで1杯ずつ、もしくは瓶ごと購入してその場で飲むことも可能。「酒屋や日本酒を取り巻く観念を変えたい」と4代目の高井大輔さん(36)は言う。
店舗の中央に大きな正方形のテーブルを1つだけ設置し、商品の陳列は最小限に抑え、棚を可動式にして空間をさまざまに利用できるようにした。例えば音楽ライブやアパレル展示、ワークショップなどでこの空間を自由に使ってもらい、日本酒とは別の目的で訪れた人にも日本酒を楽しんでほしいと話す。
新しいタイプの酒屋が誕生する背景には、清酒の国内消費量が年々減少を続け、「待っているだけでは酒が売れない」という厳しい現実がある。そんな中、東京でも数軒の酒屋が集まり「1杯売り」する「角打ちイベント」が開催されるなど、「角打ち」という言葉が広まり始めた。
「モノ」より「コト」が求められる昨今、酒屋での「角打ち体験」は新たな日本酒ファンを作る突破口になるかもしれない。(デイリースポーツ特約記者・山王かおり)