自分で造った日本酒が飲める!酒蔵で酒造り体験
日本酒を飲むのが好きだという人も、なかなか酒造りまで体験できることはない。ましてや自分が製造に携わった酒を飲める機会は滅多にないだろう。北西酒造株式会社(埼玉県上尾市)では一般消費者向けに「酒造り体験」を行っている。2017年からスタートし、18年は3月3、4日の2日間の開催で計25名が参加した。体験で造った日本酒は瓶詰めされた後、1本ずつ参加者に送られる。
◇ ◇
「よーい、スタート!」の合図と同時に、酒米の入ったステンレスのザルを一斉にタライに浸け、素手で酒米を洗う。8度という水の冷たさにじっと堪えていた参加者たちは「手の感覚がなくなる」「30秒からが辛かった」と手をさすっていた。わずか1分の作業だが、これだけでも酒造りの大変さを実感したようだ。
そのほか体験できた工程は、蒸米をスコップで掘り出す、冷ました米を発酵タンクまで運ぶ、タンクに蒸米を投入した後、櫂棒で混ぜる「櫂入れ」など。同蔵は昔ながらの製法である「生もと」造りを行っており、米や米麹をすり潰す「もとすり」という作業も今年から体験プログラムに採り入れられた。こちらもかなりの重労働だが、参加者は楽しそうだ。代表取締役社長の北西隆一郎さんも「参加者の皆さんが目をキラキラさせてお酒造りをしているのを見て初心に返りました。酒造りの楽しさを改めて感じました」と話す。
実は、この体験プログラムを企画・サポートしているのは日本酒応援団株式会社(東京都品川区)というベンチャー企業。年々日本酒の国内消費量が減少し、それに伴い小規模な酒蔵が廃業していく状況を何とかしたいと、日本酒が大好きなメンバーが集まって2015年に設立した。「日本酒のあるライフスタイルを、世界中に。」というビジョンのもと、同社の考えに賛同する酒蔵と組んで、完全オリジナルの日本酒を造って販売。日本酒ファンを増やし、市場を拡大することに取り組んでいる。北西酒造もパートナーの1蔵だ。
代表の古原忠直さんは「酒造り体験」を企画した理由を「日本酒伝道師を増やすため」だと話す。「日本酒という文化や造っている人の想いなどを直接感じることで日本酒をもっと好きになってもらいたい。そして、日本酒の魅力を一人称で語れる伝道師になってもらって、日本酒ファンを増やしたい」。
体験終了後は、同蔵の日本酒を試飲しながら交流を深めた参加者たち。夫婦や会社の同僚だという女性2人組など、参加者の年齢や性別はさまざまだ。大阪から夜行バスで来たという男性(27)は「日本酒が好きで、どうやって造られているのか知りたかった。いろんな体験ができて楽しかった」と満足そうに笑顔を浮かべて帰っていった。2日間でたくさんの“日本酒伝道師”が誕生したことは間違いなさそうだ。(デイリースポーツ特約記者・山王かおり)
※酒造り体験や商品の問い合わせは日本酒応援団で https://welovesake.com/