薬に頼らないライフスタイルとは 樹木の精油による効能に注目

 40兆円を超える日本の年間医療費。医療現場では高齢者を中心に処方される薬の量が増える傾向にあるが、薬剤師として40年以上のキャリアを持ち、免疫学を研究する医学博士がこの状況に一石を投じた。

 今春、出版された「薬のいらない健康な生き方」(ダイヤモンド社)の著者で、日本薬科大学客員教授の千葉良子氏。「医学上、“風邪薬”という名の治療薬は存在しない。治る、ではなく、緩和させる、だけ」と指摘する。同氏は「お医者さんからは賛否両論です。『千葉先生、こんなに本音を書いていいの?』と言われたこともありました」と明かす。それでも、あえて書いた理由とは-。

 「病院に行ったら薬をもらわないと損だと感じる方が多い。日本には『国民皆保険』という制度があるためで、それはいいことだと思いますが、薬の過剰投与という問題も起きてくる。これからは医療費削減もあって、セルフメディケーション(自己治療、自主服薬)が大事になる。薬を飲んでも、回復したら服用をやめる。飲みきらなくていいんです。薬との接し方は“細く、短く”が理想です」

 薬に頼らないライフスタイル。その第一歩は生活習慣の見直しにある。風邪の例でいえば、まず手洗いだ。手のひらだけでなく、爪や親指の周囲から手の甲、手首の10センチ上にかけて1分間洗い、使い捨てのペーパータオルで拭く。何度も使う布製のタオルはNG。「医療従事者50人が使ったタオルを検査したら、156種類もの菌があった」からだという。うがいは白ごま油を大さじ一杯、スプーンで口の中に入れて喉をゆすぐ。梅干、みそも基礎代謝を高める。

 要は自然のものを口にすること。千葉氏のライフワークは国産樹木精油の臨床応用。ヒノキの香りが免疫力を上げ、スギのまな板は抗菌性に優れ、クロモジの楊枝は歯周病を予防する。それらの幹や葉から採取した精油の香りを嗅ぐと交感神経を落ち着かせ、頭痛や肩凝りの改善、血圧を下げ、鎮静効果もあるという。千葉氏が樹木にこだわるルーツは自身が秋田県の山間で育ったことにあった。

 「秋田の中でも最も過疎化している地域で、9割は山林。山が遊び場でした。子どもの頃はストーブもお風呂をたくのも薪(まき)。裏山で木を切って、薪にして、くべる。木造家屋の中は畳か板の間。今でもコンクリートが少なくて、土が多い。車も少ない。空気が冷たいので、紫陽花(あじさい)が8月に見られる。周辺では80~90歳以上の方も元気に生きています」

 団塊世代が75歳以上の後期高齢者になる「2025年問題」まで、あと7年。千葉氏はスギ葉精油からジェルを開発した。口腔ケア、肺炎予防などで活用が期待される。(デイリースポーツ・北村泰介)

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