テレ朝会見はなぜ真夜中に行われたのか…福田氏発言への“カウンターパンチ”
財務省の福田淳一事務次官によるセクハラ疑惑を受け、テレビ朝日は音声データにある被害女性が同社の社員であることを発表した。会見の開始時間は19日の深夜0時から。なぜ、そのような時間帯に“緊急”会見が行われなければならなかったのか。また、当事者である同局でなぜ生中継されなかったのか。現場での取材を通し、その背景を探った。
終電時間も微妙になってきた真夜中の東京・六本木。平日ということもあって人通りは少なかったが、テレビ朝日の本社には続々と報道陣が詰めかけた。会見では「なぜこのような時間になったのか」という質問が出た。同局の篠塚浩・取締役報道局長は「福田事務次官の辞任会見を受けて」と説明した。
この日、福田氏が囲み会見したのは午後7時過ぎ。辞任理由として「報道によって仕事にならなくなった」と、メディアに責任転嫁するとともに、ハラスメント行為自体を認めなかった。福田氏が形式的であれ、一部の行為を認めて謝罪していれば、テレビ朝日の会見は翌日以降でもありだったかもしれない。だが、この対応で流れは決まった。“カウンターパンチ”は瞬時に繰り出さなければカウンター(反撃)にならない。それが同日夜のタイミングだった。
さらに女性社員が提出した音声データで確たる証拠をつかんだ自信もあったのだろう。篠塚局長は福田氏の姿勢に対する当該社員の「非常に残念です」というコメントと「すべての女性が働きやすい社会になって欲しいと心から思っています」というメッセージを読み上げ、「財務省への抗議」など自社のスタンスを打ち出した。
ということで、福田氏の囲み会見が終わってから、新たに会見を準備したため、深夜0時の開始に至った。ただ、会見を生中継したのは報道番組の時間帯と重なったフジテレビで、テレビ朝日では「報道ステーション」で告知しながら、その時間帯にはバラエティー番組が放送された。
同社広報部に「なぜ生中継しなかったのか」と問うたが、それに関する公式見解はなかった。私見だが、“事件”の当事者となった報道機関がその情報を独占して報じること、それ自体が“営利目的”とみられてしまう。今回、深夜に会見を開いた“原点”が、自社の反省点を吐露することも含めた報道機関の「倫理」であったとするならば、全局の放送がそろう前に生中継しなかったという配慮もうなづける。結果論かもしれないが、そんなことを考えているうちに夜が明けていた。(デイリースポーツ・北村泰介)