蓬莱本館と551蓬莱 「豚まん」巡る浅からぬ関係
ご存じでしたか?大阪・戎橋筋にある「蓬莱本館」と「551蓬莱」。現在は別会社ながら、ルーツは同じだということを。昭和20年に仲のいい3人の台湾人が始めた「蓬莱食堂」がそもそもの始まり。創業73年目、歴史と方向性の違いを蓬莱本館に取材した。
大阪・ミナミのど真ん中。戎橋筋を歩いていると何とも不思議な光景に出くわす。マクドナルドを挟み、北側に「蓬莱本館」と南側に「551蓬莱本店」が並び立つ。ともに豚まんを販売しており、右手の階段を上がるとレストラン。紛らわしいこと、この上ない。地元では常識かもしれないが、観光客は「あれっ?」と戸惑い気味に看板を見上げる。
別会社だが、そもそものルーツは同じ。昭和20年10月15日、台湾で近所付き合いのあった3人が異国の地で蓬莱食堂を立ち上げた。その後、昭和39年に方向性の違いから3社に枝分かれ。後に蓬莱別館は飲食業から手を引き、現在に至る。
蓬莱本館の2代目、東進明代表取締役(66)は「551さんとは私が中学生のころまでは親戚のような付き合いをしていたんですよ」と振り返る。実際、建物をみると「551蓬莱」を「蓬莱本館」が囲うような形になっており、壁も柱も共有している部分がある。
東さんによれば「豚まん」は神戸・老祥記の肉まんじゅうをベースに改良したもの。昭和21年にスタートし「私の父が深く関わった」と言う。両社は市場でバッティングを繰り返しながらも「手作り、直営店」を重視する551蓬莱と「機械化、チルド化による卸売り」にシフトした蓬莱本館に住み分けた。
規模、知名度は551蓬莱が圧倒的だが、蓬莱本館も豚まん手作り体験を実施するなど、ファン獲得へ向けて地道に努力。大阪・桜川に続き、平成23年には千葉に自社工場を設立し、全国展開にも力を入れている。
「スーパーの卸でようやく井村屋さんを抜いてトップに立てた。近い将来は東京ディスニーランドで販売できれば。千葉工場からも近いので」。味についても「豚肉は国産。私どもの方がレベルが高いと思う。それに手に持ったときにベタベタしませんし、強烈な臭いもしない」とライバル心をのぞかせた。
親子3代で食事をしていた栗本俊枝さん(74)は「ここは落ち着いて食事ができますし、豚まんはもちろん、実は餃子がおいしい。お土産にあんまんを買って帰ります」と楽しげに話した。もちろん味はそれぞれの好みだろう。それでも両社が刺激し合うことで“大阪名物”豚まんはどんどん進化していく。(デイリースポーツ特約記者・山本智行)