信濃岳夫、吉本新喜劇の歴史に名を残したい 華麗な血脈…祖父は「白い巨塔」モデル説
信濃岳夫(36)は吉本新喜劇の次代を担うと目される一人だ。
母方は「けっこう医者の家系」で、祖父は文化功労者の故山村雄一氏。大阪大の医学部長、総長を務め、一部ではあの「白い巨塔」の主要登場人物の一人のモデルという説もある。
「すごかったですよ、当時は。黒塗りの車が家の前に何台も止まってて。正月に人がムチャクチャ家に来てて、おせち料理もすごいの来てて」という医学界の大物だったが、孫には「優しかった」という。「ウソつくとかそういうことにめっちゃ怒ってるというか。正直に生きなさいみたいな、そんなん教えてもらったんは覚えてますね」と、祖父の思い出を振り返る。
自身、数学が得意で理数系が好きと祖父の遺伝子がうかがえるが、高校の同級生に誘われNSC入り。「やっぱりちょっと憧れはあったんで、いっぺん試しにやってみようかな」という動機だった。25期生で、同期にジャルジャル、銀シャリらがいる。
「同期が大阪で800人ぐらい、たぶん東京で800なんで、1600人ぐらい」という大人数が卒業後、オーディションで出番を争う。テレビで生き残っている芸人たちは「かなりすごい人たちばっかり。相当し烈な争いを勝ち抜いてきた人ばっかりなんです」と説明する。
卒業後、同級生との漫才コンビで3年ほど活動するも、ジャルジャルやプラス・マイナスの実力を目の当たりにして「これはもう無理やなみたいになって」解散。「ものは試し」と新喜劇の金の卵2期生オーディションを受けて合格した。
「俺でもできるんじゃないかみたいな、ナメた考え」で受けた新喜劇だが、座員の驚異的な力量を目の当たりにして認識が「180度」変わったという。
「普通の劇団やったら1カ月ぐらいみっちり稽古するみたいなんですけど、新喜劇は前日の晩に3時間ぐらいしかしない。ホン読み1回やって、台本読みながら立ち稽古して、台本読みながら舞台稽古して、次の日ホン読みして本番ですよ。なのにここまで仕上げるってすごい」
現在は年間約1000ステージを踏み、リーダーという「仮座長みたいな」役割も務める。「台本作ったりとか、稽古に出て中心になって新喜劇を作っていったり」という、いわば座長見習いだ。
座長を務める川畑泰史、小籔千豊、すっちーらを見ていて「中心になってお話を作るの、面白そうやな」と感じていたこと、そして「僕キャラクターも何もないんで、このし烈な新喜劇戦争の中では、座長とかそういう確固たる地位を築かんと生き抜いていかれへん」というシビアな自己認識が、手を挙げた理由だという。
「ウケるも滑るも座長が全て。稽古始まる前は、あんまりやりたないなって思いますね」という重圧を実感しつつも、自らの台本、演出でウケると「ちょっとだけ自分が認めてもらえたかな」という喜びがあるという。
家族も新喜劇に入ったことで「すごいなみたいな、やったやんみたいな感じでちょっと喜んでもらって。たまに見に来たりしますね。(関西は)新喜劇やるって言ったらすごいなってなる土地柄かもしれませんね」と、応援してくれている。
「座長になって、新喜劇の歴史を絶やすことなく次につなげていけるような、新喜劇史に名を残せるような人間になりたい」-志高く、信濃は今日も舞台に立つ。