愛犬のドレスが4万円! 老舗釣り具メーカーが開発…売り上げ3億円見込む
百花繚乱のペットビジネスに、ついに老舗釣り具メーカーが参戦した。愛犬用のドレスとタキシードをデザインし、販売するのはハヤブサ(本社・兵庫県三木市)。ドレスには刺しゅうやきらきらの装身具のビジューがふんだんに使われ超ゴージャス。タキシードにはネクタイやベストも。これがペット用?と思わずため息がでるほどの華やかさだ。しかも、価格は4万円台!。なぜ釣り具メーカーが。開発担当者に聞いた。
同社ライフスタイル事業部企画開発課の中路沙矢香さんは「釣りを中心としたアウトドア・レジャーを通じて、ファミリー層から上級者まで幅広く感動と笑顔をお届けしたいとの思いでモノづくりをしておりますが、この分野は自然が相手で安定していません。そこで、天候に左右されない異業種事業を展開できないかと考えるようになりました」と参入意図を説明した。“家族”をキーワードに「笑顔を提供できる分野」に絞り込み、4代目となる歯朶(しだ)由美社長と家族が大のペット好きというのも大きな要因になった。
ペットは家族の一員という意識は年々強くなっている。ペットの体を汚れから防ぎ、適切な体温に保つなどの目的でペット用の衣服はポピュラーな存在だが、「晴れの舞台も一緒に」という飼い主の願いをかなえる“衣装”に同社は狙いを定めた。
ウエディングシーン向けペット用ドレス、タキシードはハヤブサが手がけるペット服ブランド「BONNIE&CO.(ボニーアンドコー)」から発売。
3月末~4月始めに行われた初の受注会では多くの問い合わせがあったといい注目度は上々だ。ペット参加可の結婚式場も徐々に増えており、前撮り撮影で一緒に写り込んだり、飼い主の結婚式にとどまらず、愛犬家が集まっての撮影会など用途は広がっているという。昨今のインスタブームもあり、インスタ映えを意識した愛犬家からの関心も引いた。
ハヤブサは1959(昭和34)年、田尻隼人商店として創業。小売の釣かぎ製造としてスタートし、1970(昭和45)年に株式会社ハヤブサと改めた。来年に創業60年を迎える老舗釣り具メーカーで、フィッシングブランド「ハヤブサ」を中心にアパレルブランド「FREE KNOT(フリーノット)」などアウトドア・レジャー全般を展開。女性や子どもたちの間でも釣りファンを増やそうと「ハヤブサレディ=隼華(ハヤカ)」、「ハヤブサキッズ」などの活動も積極的に行っている。
そんなハヤブサがペット業界に参入したのは2017年3月。初年度には一般的なペット服、リードなどの小物を発売した。今年からドレス、タキシードを手がけるようになった。「FREE KNOT」は釣りやゴルフなど、機能性・快適性のあるアウトドアウエアとして定評があり、これをペット向けにも採用した。
デザインはリボンやレースをふんだんに使いかわいらしさを強調したものから、ゴスロリ調までブランドごとに特徴を持たせ、多彩に展開している。いずれも自社でパターン(型紙)をひき、デザインから縫製までを行っている。同社がある三木市は日本有数の金物の産地としての歴史を持ち、歯朶社長の「先人のモノづくりのこだわりを受け継ぎたい」という姿勢が貫かれている。
前出の中路さんは「ペットは家族が愛情を注ぐとそれ以上の愛くるしさで心を癒やしてくれます。家族の一員であるペットを守り、最高のシーンを提供するため私どもの活躍できる場はまだまだ未知数ですが、共に幸せに暮らすため最高のモノを作り、感動を与えられるコトづくりにまい進していきたい」と2年目にかける意気込みを表した。
ドレス&タキシードはペットショップなどで販売中。今月から通販もスタートさせる予定で、今年度の売り上げは3億円を見込んでいる。(デイリースポーツ特約記者・入谷 晴美)