「おい、デブ!」上司に名前を呼ばれない40代社員…ブラック企業の実態
働き方改革関連法案を巡って国会が紛糾している。29日の衆院本会議採決は見送られ、31日に先送りされた。その焦点は、高収入の一部専門職を労働時間規制の対象から外す「高度プロフェッショナル制度」の創設。「長時間労働や過労死を助長する」という懸念があり、将来的に若い世代にとっても決して人ごとではない。こうした動きを「働き方」について幅広く考える契機とし、ブラック企業問題に直面する人たちの声を紹介しよう。
「ニコニコ超会議2018」(4月末、幕張メッセ)で日本労働組合総連合会(連合)が出展したイベントでは、生々しい声がTwitterや手書きの投書で寄せられた。
「夜勤という名の27時間勤務」「どうせ暇だろ?から始まる休日出勤」「大学生なのに『大学よりバイト優先だろ』と言われる」「利益は会社の成果という店長のパワーワード」「残業代って何ですか?」…。「食べた果物の皮を顔に投げつけないで欲しい」「なんでもかんでも『コロス(殺す)』いいすぎ!!」に至ってはパワハラという次元ではなく、暴力や脅迫である。
20代の若者に混じって参加していた中年世代の男性が発言した。「上司から名前で呼ばれたことがない。いつも『おい、デブ!』と呼ばれています」。イベント後、本人を直撃して聞くと、40代の会社員だった。「デブ」が“シャレ”で通じ合う関係性が築かれているわけでもなく、本人はそう呼ばれる度に嫌な気持ちになっているが、生活もあるので名誉毀損(きそん)にも当たる言葉に耐えながら仕事を続けている。
来場した男女871人を対象に実施された「働き方に関するホンネアンケート」の結果が5月下旬に連合から発表された。10代が91人(11%)、20代が364人(42%)、30代が226人(26%)と、30代以下が8割近くを占めた。また、正社員や正職員が全体の63%と最も多かった。
「我慢できる残業時間は月何時間まで?」の問いでは「月40時間以下」が8割を占めた。また、「給料や雇用形態が原因であきらめていること、不安なこと」は「自分の老後」が39・1%で最多。「仕事上でハラスメントを受けたことは?」について、「パワハラ」が50・2%と、2人に1人はパワハラを受けている現状が判明。「お客様・取引先などからの暴言等」(31・4%)「セクハラ」(13・3%)と続いた。
連合は今回の調査を踏まえて「特に若い人たちが長時間労働の是正を求めていることが読み取れる。個別の訴えでは『残業代が支払われない』『残業が多い』『長時間労働』などがトップを占め、労働環境の厳しさを示している」と指摘。今後も“泣き寝入り”ではなく、イベントやSNSなどを通した草の根的な情報発信や連帯が不可欠になるだろう。(デイリースポーツ・北村泰介)