元阪神・山脇氏 盗撮認めたのか否か…略式手続について「行列」北村弁護士に聞く
阪神タイガースの山脇光治スコアラー(当時、後に球団から契約解除)が仙台市内で女性のスカート内を盗撮したとして、宮城県迷惑行為防止条例違反の疑いで仙台東署に現行犯逮捕された。山脇元スコアラーは当初、「後ろ姿を撮ろうとしたらたまたま風でスカートがめくれ上がった」と容疑を否認。その後、略式手続となり、罰金50万円の略式命令を受けて釈放となった。結局、山脇氏は容疑を認めたのか、認めていないのか。一般的にあまりなじみのない「略式手続」について日本テレビ「行列のできる法律相談所」に出演する北村晴男弁護士に聞いた。
北村弁護士によると、略式手続とは簡易裁判所が処分する事件で、科される処分が「罰金100万円以下」の比較的軽微な法律違反が対象になる。例えば自動車運転のスピード違反が該当する。公開の裁判を開くことなく、検察官が提出した資料に基づいた書面審理のみで、少額の罰金刑などを科す。検察官は、被疑者が起訴事実に異議がないことを確認して略式手続に入る。略式起訴に始まり、略式命令が交付され、被疑者はそこに記された罰金を納めて終了する。
被疑者が事実関係に異議があり、「私はやっていない」などと主張したい場合は正式な裁判で争うことになる。つまり、山脇氏は当初否認したものの、略式手続を選ぶ前提として、盗撮したことを認めたことになる。
検察官が被疑者に起訴事実について異議の有無を確認する場合、例えば盗撮であれば一般的に、被疑者がカメラなどにおさめた当該画像を証拠として提示することがある。物的証拠があり、否認する根拠も乏しいとあれば弁護人は「裁判に勝てる可能性は低い」との見通しを示さざるを得ない。被疑者としては略式手続を選べば、公開法廷で世間の注目を浴びることを避けられ、また、要する時間も短く済み、経費も軽く済む場合もあるなどのメリットがある。
他方、北村弁護士は逮捕・勾留とそれに続く略式手続の問題点も指摘した。
本当は起訴事実に並んだ犯罪行為はやっていないにも関わらず、否認することによって勾留期間が長期に及ぶことを嫌い、略式手続を選ぶ場合もあるという。これはつまり、えん罪になり得る。北村弁護士は「普通に考えて証拠隠滅や逃亡の恐れがない場合は被疑者を釈放すべき。長期間の勾留が続くことはえん罪の温床となる危険性がある」と指摘した。
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北村晴男(きたむら・はるお) 弁護士。長野県出身。日本テレビ系「行列のできる法律相談所」にレギュラー出演。趣味はゴルフ、野球。月2回スポーツなど幅広いテーマでメールマガジン「言いすぎか!!弁護士北村晴男 本音を語る(まぐまぐ)」を配信中。