東京にあって大阪にない小学校の防災頭巾 最激震地の箕面市で開発

クッションの背面部が防災頭巾となるピントスクール=東京ビッグサイト
グッションとしてのピントスクール。この背面部が防災頭巾となる=東京ビッグサイト
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 6月18日午前7時58分に発生した大阪府北部地震。その時、思い出したのは、5月の「第1回 学校施設・サービス展」(東京ビッグサイト)で取材した「ピントスクール」だった。小学校の硬い木製イスのお尻と背中に当てて、子どもの学習姿勢を良くするためのクッションだが、背面部を外して頭にかぶると防災頭巾(ずきん)となる。

 その記憶がよみがえった理由は、地震防災グッズであるということに加え、開発した会社の拠点が最激震地の箕面市にあることからだった。改めて、開発者に話を聞いた。

 「ピントスクール」は、福祉用具、介護用品の製造、販売などを展開する「ピーエーエス」が昨年3月から発売し、大阪市内で2校、箕面市内で1校に導入されている。色は目に優しく、逃げるときに目立ちやすいグリーン。年間300件以上のオーダーメイド・クッションを作ってきた作業療法士の野村寿子氏が開発した。

 野村氏は「大阪で生まれ育った私は防災頭巾の存在を知りませんでした。5年ほど前、東京での福祉機器展で保護者の方から『このクッションが防災頭巾なら学校に持って行きやすいのに』というご意見をいただき、そこから試作を重ねました」と経緯を説明した。

 東京の小学校では子どもたちが防災頭巾を持って登校している。その事実を知った野村氏はカルチャーショックを受けた。阪神・淡路大震災を経験しながら、その後の約20年間、関西では東京における防災頭巾に象徴されるような、目に見える対応策が遅れているのではないか。そんな思いを強くした野村氏に対し、箕面市の倉田哲郎市長が後押しした。

 地震への意識が強い静岡県出身の倉田市長は“姿勢クッション”の試作品に対して「これ、防災頭巾になりませんか」と提案。野村氏は「関西の地震災害に対する備えの弱さを市長は感じておられたとのことで企画が本格化しました。大阪では『なってみなければ分からへん』という意識があって、準備が遅くなっていたのかもしれません」と指摘した。

 関西では一部にヘルメットを教室に常備している学校もあるというが、近くに置けずにロッカーに入れているため、いざ地震が起きた時、すぐ取りだせない。野村氏は「上から物が落ちてきた時、小学1年生でも対応できるように、一番近いところ、ふだん背中に付いているクッションを外してサッとかぶれることを考えました」とポイントを説明した。

 今回の大阪府北部地震で、箕面市は最大震度6弱を観測した5市区(大阪市北区、高槻市、枚方市、茨木市)の1つ。野村氏は「出勤で家を出ようとした時でした。揺れた瞬間、テーブルの下に避難しました。今回の経験で、開発した自社の商品を、どういう場面で使う物なのかということを改めて認識しました」と実感していた。

 今回の地震発生時は通学時間帯。防災頭巾を持ち歩くことの大切さを学んだ。「体にフィットした物をかぶっていると安心感がある。親御さんの心配を少しでも和らげ、子どもの安全を守ることが一番大切。その意識を広めていかなければ」。被災地で、野村氏は思いを強くしていた。(デイリースポーツ・北村泰介)

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