土用の丑の日は代用食も…空前のウナギ稚魚不漁、前年比97%減
「土用の丑(うし)の日」といえば、このキャッチコピーを考案したとされる平賀源内が活躍した18世紀の江戸時代からウナギを食べる文化が継承されているが、近年、庶民の口にはほど遠い高価な食材となっている。絶滅危惧種に指定されたニホンウナギはさらに危機的状況に直面しており、「日本の夏はウナギで精をつける」という価値観の見直しを余儀なくされている。そこで今、注目される代用食に焦点を当て、暑い夏をどう乗り切るかを考えてみた。
宅配大手「らでぃっしゅぼーや」は都内で会見し、代用品としてサンマのかば焼き丼などの商品を発表した。同社の藤巻啓二取締役は「ニホンウナギの稚魚であるシラスウナギが近年激減している。『土用の丑の日』という食文化を守るべく、ウナギを無理して食べずに、代用食という新たな価値観も必要ではないか」と提案した。
同社がウナギの代用食をアピールした背景には、今年1月に報じられた「ウナギの稚魚が歴史的な不漁」というニュースがあった。
水産庁によると、「ニホンウナギ稚魚の池入れ実績」は、2016年12月で5・8トンだったが、17年12月には0・2トンと1年間で97%も減った。ちなみに「池入れ量」とは養殖池に入れた稚魚の数である。また、稚魚の「国内採捕量」では1963年の232トンが、54年後の昨年は15トンに激減。深刻な状況がデータからも分かる。
「海洋管理協議会 日本事務所」の鈴木充漁業担当マネジャーは「ウナギのように減っている魚は食べないようにして、持続可能な漁業で獲れた魚を選んでほしい。絶滅危惧種を日本人は食べているが、それを我慢すれば魚は増える。次世代に豊かな海の恵みを残しましょう」と呼びかける。「夏にスタミナのつくものを食べる」という文化は維持しつつ、激減するウナギにはこだわらず、栄養価のある別の食材に替えようということだ。
さっそくサンマのかば焼き丼、煮豚丼、「今年の丑の日は『牛』の日に」を掲げた牛ステーキ重などを試食した。うまい。ウナギへのこだわりをなくし、別物と割り切って食べれば問題はない。その半面、ウナギへのノスタルジーが強いと一抹の寂しさは残る。
やはり、ウナギを食べたいという人の思いは根強いようで、同社では今年もウナギのかば焼きを販売するが、価格は1年前と比べて1000円以上高くなっているという。
今年の「一の丑」は7月21日、「二の丑」は8月2日。代用食をウナギが増えるまでの“リリーフ”として復活の日を待つか、あくまでウナギにこだわって“助っ人”の輸入物を食べるか。いずれにしても、今、日本の食文化史における一つの転換期を迎えていることは確かなようだ。(デイリースポーツ・北村泰介)