病院中毒死事件2カ月で48人死亡も4人以外は自然死扱い、小川泰平氏が解説
横浜市神奈川区の大口病院(現・横浜はじめ病院)で2016年9月に入院患者2人が相次いで中毒死した事件で、うち1人の男性(当時88)を殺害したとして、同病院の元看護師・久保木愛弓容疑者(31)が7日に殺人容疑で神奈川県警に逮捕されたことを受け、元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は10日、デイリースポーツの取材に対して、薬物による中毒死とみられる入院患者以外の40数人の死亡に関しては“自然死”扱いされることなどを語った。
16年7月1日から9月20日までの間、事件が起きた同病院の4階で48人が死亡している。小川氏は「2年前の11月末に取材をした際は、9月21日以降、4階では1人も亡くなっていなかった」と証言した。
終末医療の病棟とはいえ、7~9月の82日間で48人の患者が死亡したということは驚くべき事実であり、対照的にその後の約70日間の間は死亡者がゼロだったということは、7~9月の間に不自然な“何か”があったと考えざるを得ない。
久保木容疑者は「20人以上の点滴に(消毒液を)入れた」と供述。小川氏は「事件の2カ月前から実験的に(消毒液の)量を変えながらやっていた可能性も考えられる」と推測した。
だが、すべての因果関係を結びつけることは困難だという。小川氏は「4人のご遺体からヂアミトール(消毒液)が検出していますが、その4人を除き、異物混入と死亡の因果関係を検証することは難しいのではないか」と指摘。その背景として、同氏は「病院で亡くなった患者に対して医師が死亡診断書を作成すれば『自然死』扱いとなり、不審死や変死の場合のような警察への通報義務がない。よって、行政解剖や司法解剖されることはない」と解説した。
本件の88歳男性は16年9月18日、同室に入院していた別の88歳男性は20日に死亡。また、この時期に院内で死亡した当時89歳の男性と当時78歳の女性の体内からも界面活性剤の成分が検出されたが、この4人以外は“自然死”扱いで火葬されている。今後の捜査では、薬物による中毒死とみられる4人の入院患者に対し、同容疑者がどう関与したかが焦点の一つとなる。