日本酒とデジタルアートの融合 七夕の夜に意外な『出会い』の理由
七夕の夜、いわゆる「角打ち」の酒屋で一風変わったイベントが開催された。1年に一度だけ、織り姫とひこ星が会うことを許される日に、日本酒と意外なものの「出会い」を演出。若者の日本酒離れが指摘される中、その流れに歯止めをかけようと奮闘が繰り広げられた。
舞台となった「SAKE CUBE KYOTO」(京都市中京区)は、従来の酒屋と違って開放的でスタイリッシュな空間が印象的。中央に正方形の大きなテーブルが設置され、気軽に日本酒を楽しめる。この日は「フード」はもちろん「IT」や「デジタルアート」が日本酒と融合。日本酒にそれほど興味のない人でも楽しめるような仕掛けがふんだんに用意された。
まずは「IT」。厳選7種類の日本酒が用意され、メニューに「SAKELOGY(サケロジー)」というWEBサービスを利用した。これはQRコードをスマートフォンで読み込むと、日本酒それぞれの詳しい情報が日本語と英語で見られるというもの。同サービスを開発・運営している星野翠さん(株式会社ななつぼし代表取締役)も、今回のイベントを企画した一人だ。
もうひとつ注目を集めたのが「xorium(エクソリウム)」という3人のユニットによるデジタルアート「味憶(みおく)」。専用の大きな酒器に日本酒が注がれ、その酒器に触れると、プロジェクションによる映像や光、音、酒器から伝わる振動などを体感できるというものだ。
見て、聞いて、触れた後、日本酒を飲み干すと、まさに“五感で”日本酒を味わえる。来場客の一人は「映像がきれいだった。五感で体感するという発想がいい」と初めての体験に感動。フードは、京都錦の「天ぷら酒場たね七」のスタッフがその場で揚げた天ぷらや、料理研究家の佐藤厚子さんによるオーガニック素材にこだわったものが提供された。
会場となった「SAKE CUBE KYOTO」を運営する高井大輔さん(有限会社YAKUMO代表)は、「従来の日本酒提供方法にこだわらず、この空間をいろいろな出会いの場にしたい」と話す。さまざまな文化やアートなどと共に日本酒を楽しんでもらうことによって、酒屋や日本酒の概念を変えたいと考えている。その背景には、若者の日本酒離れや日本酒の国内酒出荷量の落ち込みなどがある。
日本酒の現状を少しでも回復させたいという思いから、今後もいろんな分野とのコラボレーションを企画するという。楽しみ方はまだまだ広がりそうだ。(デイリースポーツ特約記者・山王かおり)