アンパンマンで街も元気100倍 息を吹き返した神戸ハーバーランド
街開きから約四半世紀。いったんは活気を失いかけていた神戸ハーバーランドが大いに息を吹き返した。きっかけとなった一つが、2013年4月にオープンした「神戸アンパンマンこどもミュージアム&モール」だ。「ヒットを狙うより、息長く愛されることを目指している」という同ミュージアムの考えが、街に一歩、二歩、三歩と着実に元気をもたらしている。
神戸ハーバーランドは、旧国鉄湊川貨物駅を中心としたエリアが、神戸中心部の三宮、元町と対置する西の都心商業軸核として再開発され、1992年9月に街開きした。海に面した立地を生かした商業施設群の先駆けとして話題を集めたが、神戸西武が街開きから約2年後に撤退。95年の阪神・淡路大震災時は被害が比較的軽微だったためダイエーや神戸阪急が早くに営業を再開し、被災者の生活を支えた。だが、そのダイエーは05年に、神戸阪急も12年に閉店。街は盛衰を繰り返してきた。
再び活気を取り戻したのは13年4月にイオンモールが手がけた商業施設「神戸ハーバーランド umie(ウミエ)」と「神戸アンパンマンこどもミュージアム&モール」がほぼ同時にオープンしてからのことだ。
同ミュージアムはそれまでに横浜、名古屋、仙台に開館しており、関西エリアでの立地拠点として神戸市が積極的に誘致を働きかけていた。「街に浮沈の経緯があるのは知っていた。普遍的な良さで長く愛され続けてきたアンパンマンだからこそ、街に貢献できるのではないかと考えた」と同ミュージアムの五月女豊館長は話す。
開館以来の取り組みも「一過性で来場者を増やすより、先につながることを考えてきた」という。当月に誕生日を迎える子どもへのメダル提供もその一つ。「当初は数に上限を設けていたが途中から無制限にした。『おめでとう』とすべてのスタッフから声をかけられた思い出が幸せな記憶として残れば」。こうした取り組みの成果もあり、同ミュージアムへのリピーター率は約4割と高い。
地元も盛り上げに一役買った。JR神戸駅では開館に合わせて構内BGMとしてアニメ挿入歌「サンサンたいそう」を流した(今年5月で終了)。同ミュージアムまでの経路となる地下街にはアンパンマン、ばいきんまん、ドキンちゃんのキャラクターが描かれたタイルをはめ込み、地下街を上がって同ミュージアムまでの道沿いにはキャラクターの石像10体を設置。ミュージアムに向かう子どもたちの気持ちを高ぶらせる工夫を取り入れた。石像のアイデアはその後、福岡、仙台でも採用されている。
同ミュージアムの初年度来場者は60万人の予想に対し72万人。2年目は60万人に減少したもののその後61万人、65万人、そして17年は67万人と着実に上昇曲線を描いてきた。神戸ハーバーランドへの来街者の目安となるウミエの来場者も初年度の1793万人からほぼ増え続け、昨年は過去最多の1889万人となった。ウミエのゼネラルマネージャー・吉野直樹さんも「アンパンマンミュージアムと補完しあい、小さいお子さんを持つヤングファミリー層が1日過ごせるまちになっている」と話す。同ミュージアムでは今年3月には新たな施設「バイキンひみつ基地」もオープンし、さらなるにぎわいに貢献している。
88年にテレビ放送が始まったアニメ「それいけ!アンパンマン」は当初、スポンサーがなかなかつかないなど苦労したが予想以上の人気を集め、現在は30年続く長寿番組に育った。五月女館長によると「これからも、アンパンマン人気のようにじわじわと、が目標」だ。(デイリースポーツ特約記者・山口裕史)