総裁選で沈黙の小泉進次郎氏 チャーチルの映画から学んだ政治家の原点が“現実”に
9月の自民党総裁選で安倍晋三首相の連続3選が有力な情勢となっている。動向が注目される小泉進次郎筆頭副幹事長は8月に入っても沈黙を守っているが、好きな映画に自身の政治家としての「原点」を重ねていた。その現場で耳に残った小泉発言を再現しよう。
小泉氏は7月に東京・新宿のミニシアター「K‘s cinema」で、俳優・小泉孝太郎と兄弟出演した地元・横須賀発の映画「スカブロ」の公開記念イベントに登場。その5日前には国会でブーイングを浴びていた。参院定数6増を盛り込んだ公職選挙法改正案に異論を唱えながら、最終的に賛成票を投じたからだ。そんな経緯もあってか、映画の話からも政治家としての苦悩をはらんだ言葉がこぼれて落ちてきた。
「日本は政党政治。政党の中の組織人としての自分と、個人としての思いがぶつかる所に葛藤があります。どこまで自分と向き合って判断と決断を下していけるかと。自分の青臭い思いとどう向き合うか、なりたくない大人に自分はなってないか、現状に折り合いをつけることに慣れてしまって理想を忘れていないか。日々、そこに立ち返るわけです」
そんな時に心を奮い立たせてくれるのが「映画の力」だという。小泉氏は日本で今春公開されたゲイリー・オールドマン主演の英映画「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」を挙げ、ナチスドイツとの闘いに悩む英国のチャーチル首相が車から降りて1人で地下鉄に乗る場面を再現した。
「乗客が『チャーチルだ!』となる中、彼は席に座って『最後まであきらめない』という声を聞き、国民の声は『絶対に屈しない』だと議会に演説しに行く。あの映画は基本的に実話なんですけど、チャーチルが1人で地下鉄に乗るシーンだけはフィクションなんです。あえて象徴的な場面にしたのかと。一番好きなシーンです」
鑑賞後、東京・日比谷の映画館内のエレベーターでそのシーンが現実になったという。「最初は1人のおじさんから『小泉さんですよね。握手してください』と。続いて若いカップルの女性の方が『私もいいですか』と。握手をした後、その方が『あの地下鉄の中のシーンみたいですね』とおっしゃって、僕は感動しちゃいましたね」と声を弾ませた。
「チャーチルが1人で地下鉄に乗って国民の声を聞いて自分で(民意を)確かめる。全然次元は違いますけど、僕が週末に地元の盆踊りとか町内会のいろんな所に行って、いろんな人からいろんなことを聞いて『がんばろ…』と思ったりするのとリンクするんです」
映画話は止まらなかった。「10回以上は見た」という「ゴッドファーザー」の1作目には「政治でもこういうことは『あるある』って(笑)」。クリストファー・ノーラン監督の「インターステラー」と「インセプション」は「自分の視野を広げてくれた」という。
「自分の中で『力となる映像』を頭の中にストックして持っておくこと。それが物差しになると思います」。映画館のエレベーター内で再認識した政治家としての「原点」。この先、どのような形で結実するだろうか。(デイリースポーツ・北村泰介)