ベルギービール その魅力と日本での現状を専門家がガイドした
ベルギービールといえばヒューガルデンやシメイといった銘柄が日本でもおなじみだが、ベルギービール広報センターの佐藤ひとみ代表によれば、「1500種類以上のビールがあり、そのうち約半分は日本に輸入されているといわれている」という。サッカーW杯の日本戦で注目を集めたベルギーは、ビール王国でもあるのだ。ベルギービールの魅力や日本での現状を、佐藤氏に聞いた。
ベルギービールの特徴は、前記の数字でも分かるように「多種多彩であること」。「副原料にスパイスやハーブを使用したり、フルーツを使ったりしたビールの起源もベルギー」だという。2016年にはベルギービールがユネスコの無形文化遺産に登録された。
4月に酒税法が改正されて日本のビールの副原料が大きく変わったが、スパイスやハーブ、フルーツも副原料として認められたのは「日本におけるベルギービール輸入者が、経済連携協定(EPA)を機に、ベルギー大使館通じてEUから日本国政府にロビイングした結果」だ。日本でベルギービールを楽しむ環境は、着実に整備されてきている。
その魅力を紹介するイベント「ベルギービールウィークエンド」が、日本でも2010年から開催されている。本国では1999年に首都ブリュッセルでスタートしており、日本のベルギービール関係者の間では日本開催が悲願だった。
佐藤氏は「ベルギービール広報センターの呼びかけで、ベルギービールの正規輸入会社が中心となって実行員会を立ち上げ、ベルギービールを通してベルギー王国を紹介するという主旨に基づいて、駐日ベルギー王国大使館、在日のベルギー関係機関の協力を得て、ALL BELGIUMが一致団結してベルギービールウィークエンド開催に向けて進みました」と、立ち上げの経緯を説明する。
初年度は東京1都市だけの開催だったが、16、17年は8都市まで拡大。昨年は17万人以上が来場する、アジア最大のベルギー文化交流イベントに成長した。今年も4月の名古屋を皮切りに横浜、大阪、札幌、東京(日比谷)で開催され、これから神戸メリケンパーク(8月29日~9月2日)、東京・六本木ヒルズアリーナ(9月19~24日)でも開催される。
本国ではビールを販売するイベントであるのに対し、ベルギー国外では唯一の開催となる日本では、料理や音楽などベルギー文化を多角的に紹介し、「認知向上を目指している」のが特徴。今年はベルギーの秘宝と称されるバンド「PJDS」、ジミ・ヘンドリックスとも共演したというレジェンド・ギタリストのローランドが来日し、連日ステージを務める。もちろん、ビールも11タイプに分類された、百種類近くが用意されている。
女性客が多いのも特徴で、来場者の半分以上が女性。また、若年層の酒離れが指摘される中、来場者の6割以上が20~30代なのも際立つ。佐藤氏は「デザインが統一され、全体的にオシャレ感とワクワク感があるから」とみている。
とはいえ、プラス面ばかりではない。国内でビール離れがさけばれる昨今、ベルギービール(発泡酒、新ジャンル含む)の輸入量は12年、輸入額は13年をピークに減少傾向にあり、関係者にとっては正念場を迎えているとも言える。
来年は日本のベルギービールウィークエンドが10周年を迎える。佐藤氏は「メモリアルイヤーとして新たなチャレンジを考えております」と述べており、ベルギービールのさらなる普及に向け、今から秘策を練っているようだ。(デイリースポーツ・藤沢浩之)