“カジノ先進国”韓国で耳にした光と影 「周辺にはカジノホームレスがたくさん」

 カジノを含むIR(統合型リゾート)実施法が可決されたことで、日本でも早ければ2020年代半ばに国内初のカジノがオープンする。大阪などが誘致を目指しており、一方の政府はIRを「観光先進国」の目玉とし、税収を確保したい考え。果たして、カジノは日本に恩恵を与えるのか、はたまた-。その前に、そもそもカジノってどんなところ?“先進国”韓国を訪ねてみた。

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 早いもので今年も残すところあと2カ月。年末年始の海外旅行を考えている人も多いのではないだろうか?旅先として人気の韓国では、グルメや免税店でのショッピングなどが一般的だが、加えてカジノで楽しむという選択肢も存在する。

 今回の“韓国カジノツアー”は、福岡から仁川空港へ飛び、バスで目的地の「パラダイスシティ」へ直行した。リムジンバスの運行は毎時00、20、40分。空港カウンターに7万ウォン(7千円)分のクーポン券があり、これを受け取り新規会員登録すると、その分を無料でベットできる。

 パラダイスシティは、韓国カジノ業界の老舗パラダイスグループと日本のセガサミーHDが1300億円を共同投資した北東アジア最大のIR施設。17年4月にオープンし、700室超えのホテル、1820人収容のコンベンションホールに大小2700を超えるアート作品など、それら全てに圧倒されるほどの高級感がある。

 新たに9月21日には、1泊90万ウォン(9万円)からという58室限定のデザイナーズホテルをはじめ、ショッピングモール、3000人収容のアジア最大規模のクラブ、高級スパ施設などもオープンした。文字通りの統合型施設となったことで、セガサミーの渡辺祐介さんは「これからはカジノをしない20代から30代の女性にもプロモーションしていきたい」と意気込む。

 さて早速、カジノフロアをのぞくと昼下がりにしてはまずまずの入り。3つのサイコロの目でゲームを楽しむ「大小」に挑んだが、大した見せ場もないまま1時間ほどで予算オーバー。しかし、食事はフリーで種類も味も満足できる内容だったから良しとしよう。

 翌日に向かったのは、ソウル最大の文化アミューズメント複合施設「COEX」に隣接するセブンラックカジノ江南。ここもパラダイス同様の外国人専用カジノでパスポートが必要だが、違いは韓国観光公社の子会社が運営している点だ。中に入ると、こちらも中国系が中心で続いてインド系、ヨーロッパ系、日本人の順。アジア系のおばちゃんが慣れた手つきでチップを張っていくのが印象的だった。ここでは定番の「バカラ」に挑戦。流れがいいときもあったが、前日の負けを半分取り返したところで撤収した。

 結局、今回のカジノツアーは帰国前に性懲りもなく再びパラダイスシティを訪ねて完敗した。悔しいけど、これも想定内。勝つときもあれば負けるときもある。勝負事はすべからく、このような距離感が大切ではないか。

 改めて、そう感じたのは今回、旅先で日本語が話せるタクシー運転手からこんな話を聞いたからだ。00年、韓国人も楽しめるカジノ「江原ランド」がオープンした。すると「できた当初はみんな面白がってカジノに行ったが、お金がなくなり、家もなくなる。いまでも時々、ソウルからタクシーで2時間、20万ウォン(2万円)ほど払って行く人がいるが、帰りはバスですよ。周辺にはカジノホームレスがたくさんいる」。

 まさにカジノの光と影。韓国ではギャンブル依存症の被害を軽減するため、賭博問題管理センターを設立し、全国の拠点で相談や治療を行っている。“大阪カジノ”ができる前に、まずは「カジノと上手に付き合う方法」を編み出す必要がありそうだ。(デイリースポーツ特約記者・山本智行)

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