渋谷のハロウィンごみ問題解消に向けた新たな試みとは 仮装には仮装で勝負が奏功したコンテスト

通行人にごみ捨てを呼びかける仮装した社員たち=東京・渋谷
渋谷センター街の人混み。牛歩でしか前に進めない状態だった
ハロウィンの夜にセンター街で火災が発生し、交番(右奥)裏のビルにはしごをかけた消防車の前で交通規制する警察官=東京・渋谷
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 ハロウィンで仮装した人たちによる路上へのごみ捨てが問題になっている東京・渋谷。その本番となった10月31日の夜、この「ごみ問題」を“エンターテインメント”として解消しようという新たな試みが行われた。

 この日は夕方6時過ぎに渋谷センター街に足を踏み入れた。この通りの奥で火災が発生したという一報を聞いて、一刻も早く現場に近づきたかったのだが、路上はすし詰めの満員電車状態。人の流れが滞って動かない。火災現場の周辺に規制線が張られたことで“ふん詰まり”の状態となり、人の密集度が異常だ。人混みの隙間を縫ってなんとか“牛歩”で進む。3~400メートルほどの距離を歩くのに約10分もかかって、火災現場に付いた。

 6階建てビルの屋上から出火したということで、はしご車による消火活動や安全確認が続いていた。規制線が周辺一帯に張られ、現場を迂回しなくてはならない状態だ。ハロウィンで仮装した人たちは、それでクレームを付けたり、暴れることもなく、警察の指示に従って、ゾンビや血まみれのナースにJK、アニメやゲームのキャラになりきって歩いている。繁華街中心部の火事というアクシデントによって、例年以上に街が窮屈に感じた。

 そんな重い空気の中で行われたのが、海外用WiFiルーターレンタルサービス会社「エクスコムグローバル」による「部署対抗!ハロウィン仮装コンテスト」。囚人やシスター、セーラー服のイモトアヤコ、ホラー系の怖い人などに扮した社員18人が4チームに分かれ、ごみ袋を手にして通行人から自身への“投票”代わりにごみを捨ててもらう。その袋の数で「仮装ナンバーワン」を競った。

 そう、コスプレにはコスプレだ。道を行く“仮装者”も親近感を持って社員たちが広げた袋にごみを入れた。

 「ごみのポイ捨て禁止です。渋谷の街をきれいにしましょう」。社員たちは、ぞろぞろと街を周回するコスプレイヤーたちに呼びかける。当初は「空き缶と空き瓶」がごみの対象だったが、紙コップやお菓子の包み紙なども、差し出すポリ袋に放り込まれていく。そのたびに、社員は「ありがとうございます!ハッピーハロウィーン!」と捨てた当人とハイタッチ。約1時間で28袋が集まり、そのうち10袋を集めた営業部チームが優勝した。

 同社の西村誠司社長は「創業の地であり、本社がある渋谷の街をきれいにしようと、今回初めて行った。渋谷を訪れる外国人に『ごみが散らかっている』というイメージを持たれないように企画した。みなさん楽しみながら積極的にごみを捨ててくれて一定の効果があったと思う。再来年の東京五輪に向け、ごみ問題に少しでも意識を向けてもらう啓蒙につながったのでは。やってよかった」と手応えをつかんでいた。

 ハロウィン本番が日付の変わる深夜0時まで淡々と進行した背景には、28日午前1時過ぎに起きた“暴動”のイメージがあった。センター街の路上で軽トラックを暴徒と化した者たちが取り囲んで横転させ、この映像はニュースとして世界中に配信された。その報道を意識してか、本番では人数こそ多いものの、おおむね仮装した人たちは目立って羽目を外すすことも少なく、大半の人はただ街を歩くのに終始していた。

 仮装することで“無礼講”と勝手に解釈して大暴れし、痴漢や盗撮をして嵐のように去っていく。秋の収穫を祝うキリスト教文化圏の宗教的な行事が、日本では「天下御免の乱痴気騒ぎ」にすり替えられて数年になる。言語道断の犯罪行為には警察による取り締まり強化が求めらているが、ごみ捨てに関しては、この日初めて開催された企業によるイベントなど、来年以降も草の根的に行われていくことになりそうだ。(デイリースポーツ・北村泰介)

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