1時間に3分しか開かない踏切 近畿ワースト1、2位まもなく廃止も…まだまだ存在
わずか50メートルほど先に行きたいだけなのに、扉が開くのは1時間に3分だけ-。そんな「開かずの扉」ならぬ「開かずの踏切」が、JR新大阪駅の隣にあたる東淀川駅(大阪市淀川区)の近くにある。
国交省のHPによると「ピーク時間の遮断時間が1時間に40分以上」のものが「開かずの踏切」と定義されており、全国に約500カ所存在。近畿圏のワーストは同駅南側にある南宮原踏切の57分だ。ただ、この踏切は11月11日をもって廃止。ワースト2位も同駅の北宮原第1踏切だが、隣接する第2踏切ともども同時廃止予定だ。
南宮原踏切が最大57分も遮断されるのは、午前9~10時の間。1日の遮断時間の合計は驚きの16時間以上だという。線路が8本走っていることから踏切道が46・8メートルもあり、この長さも近畿圏の「開かずの踏切」でワースト。閉鎖時間で2位の北宮原第1踏切は8~9時の間に56分も遮断機が降り、同第2踏切は9~10時に40分も閉まっている。
なぜこんなことになるのか-。同駅は新大阪駅から約700メートルしか離れておらず、普通から特急、貨物まであらゆる列車がひっきりなしに通過する。常に3分しか開かないわけではないが、それでも遮断時間は相当長い。横断途中で警報が鳴り出し、走って渡り切った男性(68)は「いつも開いたと思ったらすぐに閉まる」と苦笑い。「(遮断時間は)15分までなら待てるかな」とも話し「開かず」の状態にすっかり慣れている様子だった。
このように気長に構えられる人はともかく「開かずの踏切」には無謀横断がつきもの。最悪の場合、死傷事故の危険性もある。そこで国交省は「緊急に対策の検討が必要な踏切」の一つである「開かずの踏切」を全国的に調査し、情報公開している。
同省近畿地方整備局の2014年度末のデータによると、近畿圏の「開かずの踏切」は130カ所で、ピーク時の遮断時間が1時間に50分以上の踏切は17カ所。廃止となる南宮原・北宮原踏切を除くと“新ランキング”は以下の通りだ。
◇ ◇
【1位タイ】高槻街道(阪急宝塚線)、血清前(JR片町線)=54分
【3位】塚口東第一(阪急神戸線)=53分
【4位タイ】春日出町(JR桜島線)、金岡南一(JR阪和線)、鳳北一(同)、菖蒲池第8号(近鉄奈良線)=52分
【8位タイ】高槻街道第2(阪急京都線)、高安第1号(近鉄大阪線)、日根野南一(JR阪和線)=51分
【11位タイ】深田川(JR東海道線)、六軒屋川(JR桜島線)、善隣社(阪急京都線)、府道南(阪急神戸線)、塚口西(阪急神戸線)=50分
※同一時間内の踏切名は順不同。
◇ ◇
ちなみに東淀川駅は、踏切の廃止に伴い、橋上に移設されて東西を結ぶバリアフリーの自由通路が整備される。駅構内の地下通路は閉鎖されるが、車いすやベビーカーの利用者、高齢者など、これまで踏切を渡るしかなかった人々にとっては特に安全で便利になるだろう。スロープも設置され、自転車の利用者も自由通路を渡ることができる。スロープの利用が困難な場合は自転車もエレベーターを利用できるという。
遮断時間のあまりの長さに「東西の地域を分断している」とまで言われてきた南宮原・北宮原踏切。これからは人の流れも変わっていくのだろう。(デイリースポーツ特約記者・福岡 桃)