バナナ姫 北九州市のコスプレ公務員がボランティアで活動再開…引退から復活(上)
北九州市職員の井上純子さん(31)扮する「バナナ姫ルナ」が10月7日、同市門司港で行われたイベントで復活をとげ、再び注目を集めている。「本気すぎるコスプレ公務員」として、2016年7月から約1年8カ月間、コスプレ姿で北九州市を全国にPRし続けた井上さん。今年3月末、惜しまれつつ引退し「普通の公務員に戻ります」と宣言していたが、このほど活動再開の道を選んだわけとは?
3日、秋空のもと、北九州市八幡東区で行われた「第14回八幡東田ウルトラ25時間駅伝大会」。25時間タスキをつないで1周890メートルのコースを何周できるかを競う毎年恒例の地元イベントだ。井上さん扮するバナナ姫が会場にゲストとして姿を現わすと、「一緒に写真を撮ってください」と参加者や家族連れが次々と駆け寄り、笑顔で撮影に応じていた。バナナ姫はいまや同市のアイドル的存在だ。
「バナナ姫ルナ」は同市の門司港がバナナのたたき売り発祥の地であることから生まれたキャラクター。元々、コスプレが趣味だった井上さん。その特技を上司に見込まれ、2016年7月から1年8カ月間にわたり、バナナ姫として市内外のイベントに30回以上登場。同市のPR動画にも出演し、観光PRを行ってきた。ゆるキャラによるPRをする自治体が多いなか、市職員が自ら体を張って市をPRする姿は全国的に珍しく、新聞やテレビ、ネットなどのメディアで100回以上取り上げられた。
今年1月、「市の認知度向上に一定の成果が得られた」(観光課)として引退を表明。井上さんは長男(小5)、長女(小3)、次女(小2)の3児を育てるママでもある。3月末にJR小倉駅で開催された引退イベントでは、「仕事と家庭の両立が課題だった」、「続けられたのは家族や周囲の人たちの励ましや支援があったから」などと涙ながらに話し、ファンからは惜しまれつつ、バナナ姫ルナの衣装を脱いだ。
4月からは「普通の公務員」に戻った。しかし、次第に「何かが違う」と違和感を覚えるようになったという。
「2代目がなかなか現われない中で、バナナ姫が街からいなくなったという現実だけが残ってしまいました…。せっかく市内外の多くの方々に、バナナ姫を通じて市のことを知って頂いたのに、このままバナナ姫が人々の記憶から消えてなくなってしまうのはもったいないなと。北九州市独自の取り組みですし、誰もする人がいないからと終わらせてしまうのは、本当は自分が望むことではないということに、しばらく時間がたってはじめて気付きました。やはりバナナ姫を残したいという強い思いがあふれてきたんです」(井上さん)
しかし、すでに引退した身。また、今春、観光課から別部署へ異動となったため、復活したとしても、これまでのように市の公務として活動するのは難しい。ただ、活動再開を望む声は市に寄せられていた。8月にはインターネットメディアの「地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード2018」に選出されたことも励みになった。
「それなら個人ボランティアとして再開しようと」(井上さん)。上司など周囲の人たちと相談し、バナナ姫に扮して活動するのは公務に支障がない週末を主にして、無報酬のボランティア活動としてイベントなどに参加していくことに決めた。(デイリースポーツ特約記者 西松宏)