兄は人気俳優…挑戦を続ける老舗蔵元の社長 “ぶっちゃけキャラ”がSNSでも話題
京都の酒処といえば「伏見」が有名だが、実は京都の造り酒屋の起源は洛中(旧京都市内)で、伏見以上の酒処だった。しかし、現在は伏見を除くと京都市内に残る蔵元はわずか3軒。そのうち1軒が、人気俳優の実家としても有名な佐々木酒造株式会社(京都市上京区)だ。
同社の佐々木晃社長は「弊社の創業は明治26年。この時点でも洛中には131軒の蔵元があった」と説明。さまざまな理由で蔵元は減り続けたが、同社は「先代から受け継いだ造り酒屋を守り、次の世代に残していくことが大切」という信念で酒を造り続けている。
社長が四代目蔵元を継いだのは8年前。まずは酒造りの技術を競う全国新酒鑑評会での金賞受賞を目指し、杜氏(製造責任者)を中心に技術を向上させた。その結果、10年間も縁のなかった金賞を4年連続で受賞し、世界的なコンクールでも高い評価を得た。
ただ、今は「うまい酒を造れば売れる」という時代ではない。そこで「日本酒を飲まない層へアプローチし、新たなファンをつかみたい」と力を入れはじめたのが、日本酒とは無縁のイベントや団体、モノとのコラボレーションだ。
北野天満宮で開催中の「KYOTO NIPPON FESTIVAL 2018」では、人気スマホゲーム「刀剣乱舞-ONLINE-」とコラボした商品「KNF 純米大吟醸 聚楽第 髭切 ver.」を販売。北野天満宮宝物殿に所蔵されている日本刀「太刀鬼切丸(別名髭切)」のキャラクターをラベルにした日本酒とオリジナルのクリア升、おちょこを限定セットにしたものだ。
販売先の業態を広げることにも尽力し、近年では輸入食品やコーヒーを扱うチェーン店「カルディコーヒーファーム」での全国販売も実現させた。慣例にとらわれることなく柔軟な発想で、幅広い層に訴求している。
実は、社長は三男で、酒蔵を継ぐ予定はなかったのだが、継ぐはずだった兄(次男)が、突然「俳優になる」と言って出ていってしまった。その兄とは、今やドラマや映画で引っ張りだこの俳優・佐々木蔵之介(50)だ。
このような経緯も軽いタッチで書かれている同社の公式ホームページや、そこでの社長の“ぶっちゃけキャラ”ぶりが面白いとSNS上でもたびたび話題になっている。会社概要の従業員数の項目には「29名(ネコ含む)」とあり、「ネコは何匹いるのか」という推測まで飛び交った。社長に確かめたところ、酒造りのシーズンオフに蔵に入り込んだネコが出産し、そのうち3匹が「佐々木酒造の看板ネコ」となったという。
同社は蔵見学を行っていないが、代わりに販売店を併設。京都市内の観光ついでに立ち寄ってみてはいかがだろうか。ちなみに「刀剣乱舞」とのコラボ商品は12月2日まで北野天満宮内(絵馬所)で販売中だ。(デイリースポーツ特約記者・山王かおり)