何じゃこりゃ!?地下鉄の不思議な蛍光灯が話題に その正体は?
都営大江戸線・清澄白河駅(東京都江東区)の構内にある不思議な配列の蛍光灯がSNSなどで話題になっている。ツイッターでは今月3日、この画像をアップしたユーザーのツイートが、12日までに約2万9000件もリツイートされるなど反響を呼んでいる。果たして、この蛍光灯は何なのか。現地に足を運んで実態を探った。
同駅の改札を出て、清澄庭園方面に至るA3出口を左手に見ながら、そのまま直進すると地下駐輪場につながる通路がある。全長はゆっくり歩いて約80歩。土曜日の昼下がり、人通りはほとんどなかった。その低い天井を見上げると、無造作なようでいて、何らかの法則性に貫かれたような配列の蛍光灯群。昼間も煌々(こうこう)と光を放っている。
投稿者が「不安になる配置」と指摘する空間に圧倒され、めまいがしそうになったが、慣れてくると何だか面白くなってきた。通行人がいない時間帯だったこともあり、上を向いて何往復もした。指折り数えてみると、蛍光灯は37本あった。
当該ツイートへの返信コメントを見ると、「テキトーに試し打ちしたホッチキス感」「設計ミス?」「酔った時にまっすぐ見える配置」「狂気を感じさせる美しさ」「幻想怪奇映画のワンシーン?」「なんか異世界行きそう」「地味に怖い」「頭痛くなる」「屋根裏の配線状況が見たくてしょうがない」といった感想が並ぶ。
実はこれ、「パブリック・アート」と称される、広場や道路など公共的な空間に設置される芸術作品だった。都営地下鉄を運営する東京都交通局によると、2000年創業の大江戸線26駅に展示され、設置場所やその周辺を「ゆとりの空間」とするコンセプトだという。同局から提供された資料には「アットランダムな配列の天井蛍光灯。無造作な配置が地上の喧騒を表現する」と記されていた。
このほかの作品は、表示付きで芸術作品と分かるものが多いが、清澄白河駅の蛍光灯はその場に表示もなく、ゆがんだ日常風景として突然出現するため、乗降客が身をもって驚きを体験できるハプニング性がある。
同じ「照明アート」でいえば、大江戸線・飯田橋駅の階段とエスカレーター上部には緑色のパイプにはめ込まれたライトがクモの巣状に張り巡らされている。だが、こちらはダイナミックなパフォーマンス性があるので、何らかの作品だと想定できる。そういう意味で、“地味さ”と“さりげなさ”故に、何だか分からない想定外の不安さを醸し出している清澄白河駅の方が話題になったのだろう。
時間に追われていたり、考え事をしながら歩いていると見過ごしがちだが、移動の手段として利用する交通機関でも、たまに遊び心を持って、ふらふらと歩く余裕があれば“異界”への入口が待っているかもしれない。(デイリースポーツ・北村泰介)