【須田慎一郎・マネー論】“寝耳に水”ではなかったライザップ株暴落 日産自との差は
日産自動車のゴーン会長逮捕の一報を受けて、まさに激震が走ることになった東京株式市場だが、そのことを含めてここ最近の個人投資家は、完全にツキに見放されてしまったようだ。
ゴーン会長逮捕に関して言えば、捜査に当たった東京地検特捜部は完全に隠密行動に徹し、その動きを事前にキャッチしたメディアは皆無だったのだ。
それだけに株式市場にとっては、まさに「寝耳に水」の展開となり、株価は大きく動揺することになってしまったと言えるだろう。
もっとも個人投資家にとっては、ゴーン会長逮捕以上に気がかりなのが、RIZAP(ライザップ)株暴落の行方だろう。
今月15日、スポーツジムを展開するライザップグループや同社の傘下の企業の株価が、まさに暴落と言えるくらいのレベルで、軒並み暴落することになった。それというのも、その前日にライザップが大幅な赤字に転落するという業績見通しが公表されたからだ。
それまでのライザップに対する個人投資家の評価は、業績絶好調の新興企業というもの。そうした意味で、大幅赤字転落のニュースは、おそらく「寝耳に水」のものだったに違いない。
しかし果たして本当に、「寝耳に水」と言えるのかどうか。
実を言うと、今回のライザップ株暴落の一件は、有価証券報告書などの決算書類を注意深く読んでいたならば、事前に予想することが可能だったはずだからだ。
なぜならライザップの好業績は、本業、つまりスポーツジムの経営が好調だった一方で、M&Aによる買収後1年以内のグループ企業の経営不振によるものだからだ。そしてそのことは株式投資、あるいは企業経営に関して少しの基本知識さえあれば、容易に見抜くことができたはず。
そうした意味で言えば、ライザップのケースは、決して「寝耳に水」というものではない。ゴーン会長逮捕のケースとは、まったく違うと言えよう。
いずれにしても、株式市場は、まったくのシロウトが手を出す場所ではない、ということは肝に銘じておくべきだろう。(ジャーナリスト・須田慎一郎)