お風呂でも読める「新聞」を1日限定発行 読後は入浴剤に!活字文化の新たな世界!?

 湯船につかりながら新聞を読む。そんな無謀な試みを、記者はたびたび実践しているが、紙面が濡れると文字がにじんで読めなくなるのだ。そんな積年の失敗を解決してくれそうなニュースがあった。河北新報社が勤労感謝の日に入浴剤新聞「いい湯新報」を“発行”したというのだ。入浴しながら記事を読んだ後、湯船につけると入浴剤になるという画期的な試みが気になり、さっそく同社にその実態を確認してみた。

 「いい湯新報」は非売品。河北新報では事前に“購読”希望者を募り、当選者に送付した。紙面には風呂に関連した架空のニュース記事が掲載。「湯ぶねから働き方改革」「牛タン党と牡蠣党のお風呂会談開催」「湯川温子さんの密室シャワー事件」など楽しい読み物がレイアウトされている。読み終えたら、新聞をお湯の中に入れ、その上からシャワーをかけると、森の香りが漂う泡風呂になる。

 そこから記者は想像力をかきたてられた。これを端緒に、通常の紙面と同様のニュースや読み物を掲載した有料の“新聞”として商品化できないか。宅配は雨の日に濡れるので難しいだろうから、駅の売店やコンビニ、書店等で販売することはありえるのか…と。

 そんな“夢物語”で頭をいっぱいにしながら、その実現性について尋ねた。同社は「現状で有料の新聞として商品化する構想はありません。一般論ならびに新聞発行に携わる者として現実性は低いと考えます。主たる理由として製作に日数・時間を要すること、コスト面が挙げられましょう」と回答。膨らみ過ぎた記者の妄想は泡となって飛んで消えた。

 同社は「今回の取り組みの背景には第71回新聞大会(10月・仙台市)の関連広告企画があります。弊社では12ページの別刷り『定年GO!』を10月16日に発行しました。“はたらく人と新聞”というコンセプトで構築した広告企画で、その一環として入浴剤で疲れを癒してほしいという着想で特別に製作したプレゼント用のノベルティ。国内で入浴剤を製造販売している企業に相談して製品化されたものです」と説明した。

 さらに詳細をうかがうと、「A4サイズより小さいサイズで漫画『ワンピース』の“WANTED”と書かれた手配書をお子様向けとして石鹸にプリントした既存の製品があり、それをブランケット版(通常の新聞)サイズに薄く大きく伸ばしたもの」という。つまり新たなメディアを目指すものではなく、あくまで入浴剤の一形態に過ぎないのである。

 それでも…だ。紙媒体が厳しい時代にあって、風呂場という限定空間とはいえ、活字文化の新たな世界を切り開く、ささやかだが、一つの起爆剤となるツールたりうる可能性が潜在しているではなかろうか。往生際が悪いと思いつつも、そんな質問を投げかけた。

 同社は「新聞というメディアを取り巻く市場環境が年々難しいものになっていく中で、新聞という商品のプロモーションに使えるツール・手法の一つかもしれません。意外性や面白さで普段、新聞を手にとらない消費者に関心をもってもらう一助になる可能性はありましょう」と同業者として理解を示した。

 夢物語もいつかは現実になるかもしれない。そんなことを思いながら、また湯船につかって新聞を読むのだ。(デイリースポーツ・北村泰介)

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