レトロモダンな“大阪のシンボル” 開館100年を迎えた大阪市中央公会堂の魅力
大阪といえば、一般的には道頓堀のグリコサインなど見どころ満載のミナミや、ビジネスやショッピングの中心地であるキタなのかもしれない。しかし、本当のシンボルは中之島に存在する。今年で開館100周年を迎えた大阪市中央公会堂だ。建設された当時に斬新な印象を与えた、モダンデザインの建築。今やレトロでおしゃれな大阪の名所として堂々とたたずんでいる。
見どころは、ミュージアムのような建物全体の世界観だ。随所に彫刻、装飾品やステンドガラスがしつらえてあり、その気品高い雰囲気に圧倒される。中でも「特別室」は、国の重要文化財として指定されるのに大きな役割を果たした部屋。天井画や壁画などの芸術品の数々に訪れた人々は感嘆の声を漏らす。
オープンしたのは、1918年のこと。開館の発起人は株式仲買人であった「北浜の風雲児」こと岩本栄之助だ。彼は渡米実業団の一員としてアメリカへ渡った際に、現地の公共事業への積極性に感銘を受けた。そして帰国後、自らの資産を建設費として寄付した。
「人々が集い、学び、繋がる場を作りたかったのでしょう。そんな想いが今の大阪市中央公会堂の在り方に繋がっているんです」(広報担当・檜垣氏)
大戦を挟み一時存続の危機にさらされたものの、現在まで市民にとって欠かせない場として存在してきた。著名なオペラ団体による上演や、ヘレン・ケラーやガガーリンの講演会などの大規模イベントを多く開催。また普段は一般の人々が貸館として利用できるため、オープンな雰囲気が魅力のひとつとなってきた。
「この公会堂で行われるイベントは非常に幅広いです。このようにレトロで独特の雰囲気に反して、いかなる催しでも対応できる。この公会堂は懐が深いんです」(同氏)
平成初期には大規模な再生工事が行われ、2002年に国の重要文化財に指定された。
「建物は多くの方に使用されることで生きていきますが、そのぶん傷むスピードも速いですよね。しかし、岩本の『市民や未来のために』という想いが受け継がれ、今も変わらず使用されていることに、やはり意味があるのだと思います」(同氏)
今年11月、開館100年を祝したイベントを開催。普段は出入りできない館内が特別公開されたため、多くの訪問客で賑わった。集会室は大・中・小とあり、各部屋で様々な催しが開かれた。中央公会堂にちなんだ各種講演会・演劇、館内ガイド、ウィーン管弦楽団の団員による室内楽演奏、大阪芸術大学による特別展示やコンサートなど、芸術的なプログラムが目白押し。大阪市中央公会堂を「体験」するのにとっておきの3日間であった。
100年を迎えた今、新たな時代を目の前にしている。施設が存在する中之島エリアは、近年街全体が整備され、大阪の中でも重要な観光スポットだ。同エリアにある大阪府立中之島図書館とも連携を進め、地区全体の活性化に重要な役割を果たし、今後ますますの発展が期待される。
「この100年間多くの方に支えていただき、ここまで来ました。そんな皆様と一緒に100歳を祝いたいと思い、今回のイベントとなりました。これを機に、新たな100年間を市民の皆様とともに、さらに歩んでいきたいですね」(同氏)
(おふぃす・ともともライター 桑田萌)