なぜベートーベンの生家の壁石が日本に?新国立劇場で保管の理由
関西では年末になると世界最大規模の合唱「1万人の第九」が恒例行事だ。サントリーが一般公募で1万人の合唱団を構成し、ベートーベンの「交響曲第9番」を大阪城ホールで合唱するというもの。36回目を迎えた今年も12月2日に催された。このためベートーベンは、関西ではクラシック音楽家の中でも身近な作曲家だ。とはいえ、その偉大なる功績ゆえに近寄りがたいイメージがあるのも事実。そんな“楽聖”ベートーベンの生家の壁石がオペラの殿堂「新国立劇場」(東京・渋谷)に保管されているという。なぜだろうか?
原則として一般公開されておらず、壁石の存在を知る人は意外とは少ない。保管場所は5階応接室のガラスケース内。なぜここにあるのか-。
そもそもの始まりは、1993年に天皇皇后両陛下がドイツ・ボンにあるベートーベンの生家「ベートーベン・ハウス」を訪れたこと。その際、ノルトライン=ヴェストファーレン州のヨハネス・ラウ首相より壁石を献上された。その後97年5月、現代舞台芸術のための国立劇場として「新国立劇場」が開場し、その際に両陛下から賜ったのだという。
原則非公開だが、折に触れて一般公開されることもある。最近では今年5月、開場20周年でオペラ「フィデリオ」が上演されたときだった。劇場広報によると、このときに「情報センターで展示しました」という。ベートーベン唯一のオペラといわれる同作品は、彼の理想主義を反映しており、愛や自由をたたえた渾身の傑作として知られている。
新国立劇場は「オペラを始めとして、バレエ、ダンス、演劇といった現代舞台芸術のためのわが国唯一の国立劇場」であり、オペラ、バレエ、演劇も3研修所を備え、現代舞台芸術に関わる人の人材育成をも行っている。なお、今後の同劇場でのオペラ公演では来年2月に予定される「紫苑物語」が話題。この作品は新国立劇場から世界に放たれる新作として、各方面から注目されている画期的なオペラなのだという。(デイリースポーツ特約記者・二階堂ケン)