「お酒を飲む練習」はハイリスク?日本人の半数以上はアルコールが苦手

 今年も残すところあとわずか。忘年会や新年会、お正月など、年末年始は何かと、お酒を飲む機会が増えますね。ところで、皆さんは、お酒は飲めるほうでしょうか。あまり飲めない人でも、少しずつ酒量を増やして「飲む練習」をすると飲めるようになるという説もありますが、本当なのでしょうか。金沢医科大学の堤幹宏先生にお話を伺いました。

  ◇  ◇

 -日本人は、欧米人に比べ、お酒に弱いのでしょうか。

 「アルコールは、肝臓で分解されてアセトアルデヒドという物質になります。アセトアルデヒドは、顔が赤くなったり、心拍数が上がったり、吐き気や頭痛を引き起こすことがある毒性の物質です。アセトアルデヒドを分解する能力が高い人ほど酔いにくいのですが、日本人の半数以上は、アセトアルデヒドを分解するのが苦手。お酒を飲める人が45%、ビールをグラスに1杯くらい飲める人が45%、まったく飲めない人が10%くらいいます」

 -多少飲める人が“お酒を飲む練習”をするとどうなるのでしょうか?

 「肝臓でアセトアルデヒドを分解する酵素は2種類あります。近年、アセトアルデヒドをどんどん分解することができ、飲めば飲むほど増える酵素が発見されました。その酵素は、お酒に含まれるエタノール(麻酔薬)も分解することができます。そのため、ビールをグラス1杯くらい飲める人が、酒量を徐々に増やしてお酒を飲む練習をすると、だんだん飲めるようになってしまうのです」

 「しかし、『飲む練習』は、非常に高いリスクを伴うことになります。まず、アルコール依存症になりやすい。お酒の種類や美味しい、美味しくないということは、どうでもよくなってしまいます。さらに恐ろしいことに、将来、咽頭がんや胃がん、食道がんになりやすくなるのです。そうした患者さんに『あなた、昔、お酒を飲めなかったんじゃない?』と尋ねると、しばしば『飲めなかった』という返事が返ってきます」

 -堤教授おすすめのお酒の飲み方を教えていただけますか?

 「お酒を飲める人の場合、1日1合~2合程度ならば、疲れを取ったり、リラックスしたりできるので、『酒は百薬の長』だと言えるでしょう。ちょっとした安定剤になります。週に2日くらい休肝日をもうけて、肝臓を休ませるといい。大酒飲みは、アセトアルデヒドを分解することができますが、記憶をつかさどる前頭葉が萎縮する傾向にあることも忘れないでください」

 「人は、悲しい時や腹立たしい時に限って、延々とお酒を飲むようになります。1人で飲むと、止めてくれる人もいない。お酒を飲む時は、誰かと一緒に楽しく飲むのが一番です。ストレスは体を動かして発散させましょう。体を動かすとよく眠れる。悲しいことや腹立たしいことがあったら、お酒に頼るのではなく、外に出て歩く、走るなど、思いっきり体を動かしてから眠り、爽やかな朝を迎えてください」

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 堤医師によると、どんなお酒をどのくらい飲んだのか知ることが、飲み過ぎを防ぐコツなのだそうです。日本酒1合がビール大瓶1本、もしくはウイスキー60ccか焼酎3分の2合に相当します。ワイン1本は、清酒3合というのが、おおよその目安です。適量を知って、休肝日をもうけ、楽しいお酒を飲みましょう。(神戸新聞特約記者・渡辺陽)

◆渡辺陽(わたなべ・あきら)大阪芸術大学文芸学科卒業。「難しいことを分かりやすく」伝える医療ライター。医学ジャーナリスト協会会員。フェースブック(https://www.facebook.com/writer.youwatanabe)

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