“世界最長”かもしれない日めくりカレンダー 和紙問屋の“ゆる~い”マステ
来年の手帳やカレンダーが店に所狭しと並ぶ中、このたび初お目見えした「まるごと日めくりカレンダーマスキングテープ2019」が、小粒ながらキラリと光っている。大阪市天王寺区の和紙問屋オオウエが製造。幅30ミリで一見普通のマスキングテープ(以下、マステ)だが、もしかすると「世界最長」かもしれない画期的な商品だ。
というのも、一般的なマステは長さ約30センチに描かれた絵柄を何度か繰り返して作られているが、この“日めくりマステ”は約10メートルにわたり同じ絵柄(日付)を一度も繰り返すことなく、1月1日から12月31日まで貫き通しているのだ。
開発を可能にしたのは、医薬品パッケージを扱う印刷会社。日付や数字などを連番で印刷する技術を応用し、従来のマステの何倍も長い絵柄を印刷できるようになった。「全柄が違うマステというのは、ここでしか作れないのでは」と、商品を考案した同社営業企画室室長で4代目“候補”の大上博行さん。
「巻く」以外の工程は全て職人による手作業のため、価格は2052円(税込み)と割高になるが、「こういう商品を待っていた」という声が多く寄せられている。これまでに約2000本を出荷。ノートをアレンジして自分なりの手帳を作る「バレットジャーナル」の流行も追い風になったようだ。クラウドファンディングに出品したところ、約300人の支援者と目標金額の約3倍が集まった。
1日単位でも連日でも好きなように切り取れるので、旅行する期間を貼り付けてスケジュールを立てたり、一日分を記念写真やSNSに添えたり、アイデア次第で使い方は無限に広がる。
同じ技術で、大阪出身の作家・織田作之助の小説「夫婦善哉」のマステも開発。「実用性ゼロですが、お気に入りの一節だけを持ち歩いたり、本を贈るような感じでプレゼントしても素敵ですね」と大上さん。
オオウエでは和紙製品のブランド「和紙田大學」を立ち上げており、和紙の伝統(トラディショナル)と「ゆるいデザイン」をかけ合わせた「ゆるディショナル」がコンセプト。これらのマステだけでなく、上質な和紙で作るポチ袋や一筆箋、ご祝儀袋などに、一味も二味も違うデザインを施している。
一体どんなデザインか。「コレッポチ」(ポチ袋)シリーズの一例では、間取り・セロトニン・ねぎ・将軍「綱吉くん」…など。どれもこれも「無難」とは程遠く「シュール」「変かわいい」「微妙な違和感」などと形容されるが、その分、贈る相手の個性にピッタリはまる絵柄を見つけた時の喜びは深い。
大上さんの願いは、贈る人と受け取る人との間に、和紙同様の「上質な」コミュニケーションが生まれることだという。
「気軽に手に取れる製品をきっかけに『和紙って結構面白いやん』と思ってもらえたらうれしい」
和紙田大學の製品は、同社のオンラインショップ「うるわし」また一部の大型文具店などで購入可能。来年2月に京都で開催される「紙博」にも出展予定というから、一度ご覧になってはいかがだろうか。(デイリースポーツ特約記者・福岡 桃)