週刊文春から「喫煙室」が消えた たばこ巡る時流の変化…53年続いた連載の名称変更
著名人らが一服の文化を語る週刊文春の連載「喫煙室」が、2018年12月27日号で53年にわたる歴史に幕を下ろした。19年からは、「たがいのみらい」という新しいタイトルに変更する。1965(昭和40)年12月6日号から始まり、井伏鱒二や永井龍男、吉田健一といった文春ならではの文壇の名士をはじめ、時代をリードする各界の第一人者がページを彩ってきたが、たばこを巡る時流の変化も反映し、連載タイトルから「喫煙」の文字が消えることになった。
「喫煙室」は日本たばこ産業株式会社(JT)提供の広告企画コラムで、2013年5月からは談話形式に。JTの担当者によると、現在は年20回のペースで掲載しており、作家や映画監督、音楽家、俳優ら錚々たる顔ぶれによる「極上のくつろぎ」を提供する文章が読者を楽しませてきた。同タイトルでの最終回となる創刊3000号記念特大号では、「天地明察」や「十二人の死にたい子どもたち」などで知られる作家の冲方丁さんが、「たばこの未来」と題して、加熱式たばことの付き合いについて「火から電気に移り変わる文明の移行の真っただ中にいる」などと感慨を述べている。連載は「くつろぎの時間」というタイトルで書籍化されており、16年までに計23冊刊行されている。週刊文春誌上で最も長い連載企画という。
喫煙率が年々低下し、受動喫煙の問題が注目されるなど、近年、たばこに向けられる目は厳しさを増す一方だ。JTは00年代はじめ頃から「(喫煙者と非喫煙者の)共存社会の実現」を掲げ、コラムの内容にも、喫煙マナーや他者への配慮を意識的に盛り込んできたという。タイトル変更の話が持ち上がったのは今年の秋頃で、「創刊3000号」と「平成の終わり」という大きな区切りを迎えるこのタイミングで、多様性を認め合う共存社会のニュアンスを込めた「たがいのみらい」としてリニューアルすることになった。
JTの担当者は「吸う人、吸わない人、どちらにもご登場いただいたが、愛煙家の方は昔の『いい時代』を思い出しながら話すことが多いように感じた。嗜好品であるたばこが、その方の大切な記憶と結び付いているのだと感慨深かった」と振り返る。
タイトルは変わるが、「喫煙室でくつろいで話す」ようなコラムのテーマは変わらないという。JTは週刊新潮でも同様の広告企画コラム「あ、ちょっと一服いいですか?」を連載しているが、こちらも同じタイミングで「そういえば、さあ」に変更する。ちなみにJTは先日、1965年から続けてきた「全国たばこ喫煙者率調査」を2019年以降は実施しないことを発表。平成の終わりと共に、たばこを巡る風景がまた大きく変わることになる。(神戸新聞・黒川裕生)