客員教授、賃貸物件オーナー、拳法家…R-1参戦のマルチすぎる“歯科医芸人”

 大阪・十三にある賃貸物件「ゴルゴ十三」のオーナーで歯科医の陳明裕さん(59)。ピン芸人日本一を決める「R-1」に12回目の参戦を果たしたが、あえなく1回戦で敗退した。今年から出場資格は“芸人のみ”のハズ…。そう、実は陳さんは「パンヂー陳」という名で芸歴14年のよしもと所属芸人でもあった。新年早々に夢が砕かれたが、マルチに活躍するこの男、やり遂げたいことはまだまだ他にもあるという。

  ◇  ◇

 いったい、いくつの顔を持っているのか。賃貸物件「ゴルゴ十三」のオーナー・陳明裕さん。その本職は北千里と西宮北口に「めいゆう矯正歯科」を構える歯科医で02年から毎夏、米ニューヨーク州立大バッファロー校の客員教授として教壇に立っている。

 年末、その陳さんから突然、「R-1」に出場するという知らせを受けた。直後にはよしもとクリエイティブエージェンシーの担当マネジャーから「うちのパンヂー陳がお世話になっています」と連絡が。

 「エェ~、いまなんとおっしゃいました。なに~、パンヂーチン?知らんで」と最初はチンプンカンプン。理解に苦しんだが、しばらくして謎が解けた。そして今年も日本一のピン芸人を決める「R-1」に出場するというので会場をのぞいてみた。

 ご存じの通り、1回戦の持ち時間は2分間。パンヂー陳は白衣姿で胸ポケットに歯ブラシをさし、ネタを披露した。画用紙の代わりにノートパソコンに絵をかき、“歯科医なぞなぞ”をテンポよく挙げていく。

 「外した入れ歯がめちゃめちゃくさい画家はだれでしょう、というなぞかけ。はい、はずしたはくさい。はい、そうです、葛飾北斎」と持って行き、そこそこの笑いをとったが、いかんせんノートパソコンでは画面が小さく、客の反応は微妙。あえなく、予選落ちとなった。

 「今年一番の目標にしていたんですが、残念です。また来年チャレンジします」

 芸歴14年。過去のベストは2回戦進出だという。その“パンヂー陳”はテレビ東京系の人気番組「開運!なんでも鑑定団」に2度出演し、ずっこけて笑いを誘ったこともある。

 1度目の出演では350万円で購入したアンディ・ウォーホルの絵画が500万円に。これに気をよくして、骨董商を営んでいた父親が店をたたんだ後も応接間に大切に飾っていた「唐三彩」を出品すると…。

 「わざわざ残していたもの。最低でも500万になるのではと楽しみにしていたんですよ。そしたら何と1000円でした。ショックでしたけれど、あのときが一番ウケたかも」

 日本拳法も高校時代からたしなみ、五段の実力者。最年少で出場した昨年の全国シニア大会は優勝候補と目されながら無念の3位に終わっており「今年こそ優勝したい」とリベンジに燃える。また「ゴルゴ十三」に続く「東三国連太郎」の物件探しも「これと思ったものが違法建築でした」と笑う。なかなか思うようにいかないが、マルチすぎる歯医者さんは全くへこたれていない。(デイリースポーツ特約記者・山本智行)

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