紀州のドンファン不審死、真相解明カギは薬物ルートに…大阪府警も協力 小川泰平氏が解説
「紀州のドン・ファン」と称された資産家で酒類販売会社社長・野崎幸助さん(当時77)が昨年5月24日に不審死してから9カ月。元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は23日、デイリースポーツの取材に対し、野崎さん急死時の自宅にいた60代家政婦の新たな証言や、大阪府警の捜査協力による薬物ルートの解明などを踏まえ、現時点での動きを解説した。
家政婦は22日放送のCBC制作(TBS系)「ゴゴスマ」に素顔で録画出演。「警察はまだ私を疑ってるんですよ。私の携帯電話に入っている連絡先の知人に電話をかけ、私がどんな人間かを聴いているようです。警察に事情を聴かれた知人から『大丈夫?』という連絡があったが、中には『金輪際、かけてこないで』と言われて電話がつながらなくなった人もいる」と証言した。現在は、都内の自宅近くにある居酒屋で働いているという。
小川氏は「家政婦さんの話は事実だと思いますが、警察が本当に疑っているのであれば、関係者から事情を聴くのに電話で捜査することはまずありません。住所を調べて直接会って話を聞くはず」と指摘した。
一方、薬物関連で大阪在住の野崎さんの関係者に対して大阪府警が話を聞いているという。小川氏は「薬物に関して和歌山県警では専門の捜査員が少ないので、大阪府警の組対(暴力団などの組織犯罪対策部署)や薬物対策課の捜査員に捜査協力の依頼をしているという話は昨年から出ていました。和歌山県警は2000人、大阪府警は2万人と10倍の差がある。1つの事件に使える捜査員の数も違いますし、過去に扱った薬物事件のデータ数も雲泥の差がある。そういった面では、大阪府警に応援を仰ぐのが通常かなと思います」と説明した。
小川氏はまず「当初、野崎さんのご遺体が発見された時、警察の判断は不審死でなく、自然死だった。ですから司法解剖していないんです。ただ、他の警察官から『おかしいのでは』という判断があって行政解剖した結果、覚せい剤反応が出た。その時に、調べていなかったら、自然死(病死)扱いになっていた可能性もある」と事の発端を振り返った。
その上で同氏は「薬物捜査には“薬物の指紋”と言われる手法がある。同じ薬物でも製造方法などの違いによって、製造方法、製造地、不純物の割合等の特徴から出所を調べる。また、同じデータの薬物の取り扱いが過去にないかなど『異同識別鑑定』を用いていると思われます。野崎さんの不審死が“事件”だとすれば、身近の者でなければ犯行は不可能と推測されており、その関係者が直接、薬物の前歴者とつながっていなくても、誰かを介してつながる可能性もあるので、そこを調べている。時間がかかります」と解説した。
今後の行方は?
小川氏は「ある程度、捜査対象を絞って、何か“引きネタ”というか、事情を聴ける者がいないか、創意工夫して捜査を一歩一歩、前に進めていると聞いています。警察は不審死という容疑よりも、薬物に対する容疑で身柄を押さえられる準備をしていると考えられます」と推測した。