観光客でにぎわう奈良町の「南の玄関口」に観光案内所とカフェがオープンし、このほど記念式典が行われた。実はこの建物、難読駅名で知られる「京終駅」（きょうばて＝ＪＲ西日本・桜井線）の旧駅舎を改修し、建設当時の姿に復元したもの。式典には地元出身で、現在ＮＨＫ連続テレビ小説「まんぷく」でコテコテの関西弁を操るイケメン喫茶店マスターを好演中の俳優・加藤雅也（５５）も出席。駅前の広場には朝から大勢の人が詰めかけ、築１２０年のレトロ駅舎の新たな門出を祝った。

　「キョウバテ」の難読名称は、平城京の外京（げきょう）と呼ばれた場所に広がった奈良町の南の「ハテ（終わり）」に位置することが由来。ちなみに駅舎があるのは南京終町（みなみきょうばてちょう）。加藤は「昔は“ナンキンオワリマチ”って読まれてましたけど、読めない人がいなくなるよう全国に広めていかなアカン！私たちでがんばりましょう！」と、同じく地元出身で式典にサプライズ登場した映画監督・河瀬直美さん（４９）と意気投合した。

　奈良市観光特別大使を委嘱された加藤は、市長から手渡されたパネル大の名刺を掲げて「奈良といえば大仏、名刺もこんなデカい」と笑わせた。続けて「今後は奈良に大河ドラマを誘致したい。リニアモーターカーが奈良に来る頃、ぼくは７５歳。それまで大使をやめてくださいと言われても、意地でも居座りますよ！」と、奈良が好き過ぎる決意表明。出演中の「まんぷく」では「パーラー白薔薇」のマスターを演じているが、駅舎カフェのカウンターでも「ユーアーコーヒー、オッケー！」の決め台詞を期待したい。

　旧京終駅舎は１８９８年（明治３１年）に建設。老朽化で取り壊しも検討されたが、約２年前に設立された地元有志のまちづくり協議会とＪＲ西日本、奈良市などで話し合いを重ね、奈良町の最寄り駅という立地を生かしたコミュニティースペースとして改修、復元が決定した。無償譲渡を受けた奈良市が工事費などを負担。ホームに通じる待合室は昨年３月に完成し、すでに供用されていた。

　今回は旧駅舎の西半分にあたる元駅務室に、観光案内所を兼ねた駅舎カフェ「ハテノミドリ」が完成。運営は地元の若手を中心に立ち上げたＮＰＯ法人が担当する。店内では喫茶軽食のほか、奈良県産の商品も販売、広々とした居心地のいい空間に仕上がっている。

　約３５年無人駅だった京終駅の初代「コミュニティ駅長」には、地元自治会長の丸山清文さん（７０）が就任した。ＪＲ西日本によると、一般市民が駅長になるのは初めて。ただ、仕事は周辺の清掃や観光案内などすべて無償のボランティアだ。

　実は丸山さん、小さい頃から大の鉄道ファン。さらに定年まで３９年間消防士として勤め上げたというから、駅長帽を被って敬礼する姿が決まっていたのも納得だ。しかもこれまで約２５年間、休日を使って日本全国の被災地に出向くスーパーボランティアとしても活躍していたという公私ともに奉仕の人。今後は毎日、主に午後に駐在予定で、気軽に声をかけてほしいとのこと。

　駅舎カフェ「ハテノミドリ」の営業時間は、３月末までが１１時～１５時（月・水休業）、４月からは１１時～１９時（水休業）の予定。イベントも随時開催されるという。（デイリースポーツ特約記者・鹿谷亜希子）