君はウナシーを見たか…半端ないゆるさで10年たっても衝撃 しかも活用には細かい決まり
「ウナシー」ってみなさんご存じですか?10年前につくられた神奈川・横浜市戸塚区のマスコットキャラクターですが、一度見たら忘れられない衝撃的な造形で、今も話題を集めています。とにかく写真を見てください!太さが均一でない輪郭線に、不揃いな間隔の足、そして不定形な体中を覆う色とりどりの斑点…。まるで「子どもの落書き」というか、半端ない「ゆるさ」じゃありませんか!?このキャラの不思議はそれだけではありません。チラシやポスターにつかったり、デザインを活用した商品をつくろうとすると、規約が厳しすぎるとも言われているのです。ちなみにウナシーの着ぐるみは、イラストとちょっと違う雰囲気だったりするんですけどね…。議論を呼ぶウナシーのデザインについて、戸塚区役所の担当者の方に聞きました。
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-ウナシーですが、本当に不思議な形状ですね。
「ウナシーは戸塚区政70周年を記念して、2009年に作成されたキャラクターです。戸塚区に多いウシと名産品の『浜なし』をモチーフにデザインされた、『心優しい、のんびりやの牛』です。キャラクターを公募したときに最優秀賞をとったのが、小学生の女の子が描いたイラストでした。そのイラストを忠実に再現するとともに、横浜市出身の画家・ミヤケマイさんがデザイン化しています」
-デザイン化、といいますが、どこをどうデザインしたのでしょう。
「イラストを加工するというより、いろいろな場所で使いやすくするための作業をしていただいたといったほうがよいですね。小学生が描いた絵は、横向きで4本足で立つ基本ポーズだけだったのですが、作家さんの手によって、立ったり、おじきさせたりするポーズを7つ増やしてもらっています」
-ほかのポーズも子どものイラスト的な雰囲気ですよね。困ったり注意しているときに、まゆ毛が出てくるのもかわいいですね。
「あと、ウナシーの体の斑点につかわれている色の定義と意味付けをしてもらっています。ウナシーの色は戸塚区の風物や名物を表しているんですよ」
-それがウナシーのデザインを活用するときに守るべき決まりをまとめた「デザインガイドライン」の内容がとても細かいことにつながっているのでしょうか。斑点模様を再現するためか、22色もの色が細かく指定されていますね。SNSでは印刷のときに大変とか、キャラクターを活性化したいのであればほかの方法があるのでは、などの声もあります。
「ウナシーの色ひとつひとつには意味があります。たとえば赤色であれば、女装した踊り子がお札をまくという戸塚に残る厄霊除け行事『お札まき』を、黄色は区内を流れる柏尾川に自生しているミズキンバイを表しています。都市部では大変珍しい絶滅危惧種の花なんですよ」
-その一方で、こんな造形のキャラクターを、ほかの人が再現できるような決まりを考えるのって、とっても大変だったのではないかと思いました。
「作家の方とウナシーのデザインについて考えていったことが、結果としてガイドラインにまとめられています。特定の部分を考えるのが難しかったというようなことはなく、デザインの課題について考えていく中で生まれた感じです」
-ただ、ウナシーには着ぐるみがありますが、キャラクターのイラストとは、大分違う感じがします。全体の輪郭もふんわりしているし、目の大きさと形も明らかに違います。かわいくするためにデフォルメされているように思いますが、こういうのは問題ないのでしょうか。
「着ぐるみなどについては、企画や試作の段階でイメージを作家の方と共有し、問題がないか確認してもらいながら作成しました」
-問題がないかの判断基準はどのあたりにあるのですか。
「目視でウナシーらしいイメージが伝わるかだと思います。近隣の商店街などでキャラクターを模したストラップなどが作成されていますが、それらも試作品を区役所に送ってもらい、作家さんの方に確認してもらっています」
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ウナシーは2012年から14年にかけて「ゆるきゃらグランプリ」に3回エントリー。最後に出場した14年のときに総合1699体中377位になったそうです。着ぐるみは、地域のお祭りや区役所のイベントにも出動しており、その回数は年間80回ほど。地域の方には大変親しまれている存在のようです。「これをきっかけに、ウナシーを知っていただき、ウナシーを愛していただけたら」と戸塚区の担当者。最初はびっくりしましたけど、見慣れてきたら、私もウナシーのことがだんだんかわいくなってきました…。(神戸新聞・川上隆宏)