東京初の終夜営業銭湯は今…「働き方」の多様化で未明や早朝の客足伸びる

東京スカイツリー(右上)をのぞむ終夜営業銭湯「大黒湯」=東京・墨田区
熊本県とのコラボイベントとして、浴場のペンキ画に描かれたくまモン=都内の大黒湯
くまモンとのコラボイベントも行った銭湯「大黒湯」の入口=東京・墨田区
3枚

 生活スタイルの多様化が進む中、東京の下町でオールナイト営業を続ける銭湯がある。東京スカイツリーのおひざ元、隅田川のほとりにある東京・墨田区の「押上温泉 大黒湯」。2017年11月から、朝10時までの終夜営業を実施。1年3か月を経た今、地元住民や外国人を含む観光客でにぎわっている。

 大黒湯は1949年創業。今年70周年を迎えた。三代目の3代目店主・新保卓也さんは79年生まれの39歳。「(家業に)入って7年ほど」という。写真家の蜷川実花さん、バーチャルアイドルの初音ミクや中村獅童の超歌舞伎、くまモンとの銭湯コラボなどにも取り組む新世代の経営者だ。終夜営業にした背景と現状をうかがった。

 「お客さんの声ですね。働き方の多様化で土日関係なく深夜帯に働く人がいる。仕事後の夜中の入浴、さらに朝湯に入りたい方もいる。東京23区では初めての試みでした」。平日は午後3時から、土曜は同2時、日曜は同1時から翌朝10時まで。それまでの深夜0時閉店から10時間も延長した。人繰りや経費の負担は大きくなるが、心意気で踏み切った。

 当初、この時間帯に計30人ということも。貸し切り状態になることもあったというが、今では平均で平日約100人、土日約140人に増えたという。

 「お客さんにも認知されてきました。(繁華街)錦糸町の飲食店のオーナーさんなどが午前1時過ぎまで働かれて、2~4時くらいに来られる。『5分でもいいから浴槽につかりたい。頼むからやめないでくれ』という声は多いですね。そうやって地元の人に喜んでいただいている間は、なるべく続けようと」

 12年開業の東京スカイツリーは銭湯の客層も変えた。新保さんは「常連さんだった長屋の方々が立ち退きで引っ越されていった。どうしようか…と思っていたら、スカイツリーと共にできたマンションの方たちが来てくださるようになって。ご自宅にお風呂はあるのに地元の銭湯だからと来たよと。うれしかったです」と振り返る。

 家風呂のない人のためにあった銭湯だが、今では趣味にする若い世代や日本文化として接する外国人観光客も多い。新保さんは「ファミリー、カップル、高齢の方まで年齢層は幅広い。外国人の方はホテルに泊っていても銭湯文化を体感したいと、事前に勉強して来られるのでマナーもいいです」と指摘する。

 多様化する銭湯。オールナイトに加えて「エンターテインメント」の要素も必須だ。「日替わりの薬湯は6年前からの取り組みで、何百種類も。生のスイカを丸ごと入れたり、初音ミクさんのイベントでは長ネギを入れたり。露天風呂も朝の方がゆっくり入れます。湯気の中の朝焼けは幻想的です。常連さん同士が仲良くなったり、僕も面白く遊ばせていただいています」と新保さん。大人460円で満喫できる、眠らない銭湯からコミュニティーが生まれている。(デイリースポーツ・北村泰介)

関連ニュース

ライフ最新ニュース

もっとみる

    主要ニュース

    ランキング

    話題の写真ランキング

    リアルタイムランキング

    注目トピックス