あおり運転抑止の6秒ルールって?加害者にも被害者にもならないためにすべきこと
執拗なあおり運転で親子4人が死傷した東名高速の事件。以後、各地であおり運転や危険運転による事件が報道されています。2016年に検挙されたあおり運転による事件は、7000件にも上っているそうです。加害者にも被害者にもならないためにどうすればいいのか。日本アンガーマネジメント協会の代表理事でアンガーマネジメントの第一人者の安藤俊介氏に話を聞きました。
■誰もが加害者にも被害者にもなり得る
-東名の事件以来、あおり運転がにわかに注目を集めています。加害者は日頃からキレやすい人なのでしょうか。
「アメリカでは、誰もがあおり運転の加害者にも被害者にもなり得ると考えられています。必ずしも一部の特殊な人があおり運転や危険運転をするわけではない。強いて言えば、感情のコントロールの苦手な人が加害者になりやすいでしょうけど、必ずしもそうとは限らないんです。『まさか自分が?そんなはずはない!』と思ってはいけません」
(続けて)
「アメリカでは、あおり運転のことを『ロードレイジ』というのですが、もっと概念が広く、たとえば『車の中で悪口を言う』『腹を立ててハンドルを叩く』というのもロードレイジに含まれます。普段、運転中にそういうことをしてしまうことがあるのではないでしょうか。しかし、その延長線上にあおり運転や危険運転、犯罪があるのです」
-なぜ、あおり運転による事件がたびたび起こるのですか。
「車社会は、ネットと同じように匿名性が高いんです。鉄の塊の中で守られている。自宅のリビングでテレビを見ながら悪態をつくのと同じ感覚で、何をやってもいいと思ってしまうんです。『あおり運転や危険運転は犯罪だ』という自覚に乏しかったということもあるでしょう。被害者も『たちの悪い人間にからまれた』くらいの感覚で、警察に通報するのをためらってしまうんです」
-ロードレイジをしない、させないためにできることはありますか。
「運転をしていると誰でも腹が立つことはあるでしょう。しかし、そのひとつひとつに反応しないことが大事です。『反射的にクラクションを鳴らす』とか『強引に割り込ませないようにアクセルを踏む』とか、絶対にしてはいけません。とにかくやり過ごして、その車が走り去って見えなくなるまで待ちましょう。視界に入っていると腹立たしさが消えないのですが、視界から消えると忘れてしまう。しょせんそんなものなのです」
■イライラしない!気持ちを落ち着ける『アンガーマネジメントテクニック』
-気持ちを落ち着けるためのアンガーマネジメントテクニックを教えてください。
「次の4つのことを覚えておいてください」
1)6秒待つ…多くの人は、腹が立つことがあっても、怒りが完全に消えるわけではありませんが、6秒あれば理性的になれます。
2)大切なものを見えるところに置く…家族の写真など、大切なものを見えるところに置きましょう。あおり運転や危険運転をしたら大切なものを失ってしまうと、常に意識づけるのです。船で言ったら「いかり」のようなものです。
3)気持ちが落ち着く言葉を自分で言ってみる…「たいしたことない、大丈夫」と、セルフトークします。自分に優しい言葉をかけるだけで、少し気持ちが楽になれます。
4)深呼吸をする…腹が立つことがあっても、ひと呼吸置きましょう。ゆっくり大きく息を吐いて、そのあと息を吸います
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以上のお話を踏まえて、ロードレイジの被害者・加害者にならないための9か条を以下に紹介します。
・目的地に余裕を持って到着する
・割り込まない
・追い越し車線をゆっくり走らない
・あおらない
・他の運転者を挑発しない
・緊急時以外にクラクションをならさない
・危険運転者には抜いてもらう
・絶対に車から降りない
・相手の車が見えなくなるまでやり過ごす
(神戸新聞特約記者・渡辺陽)
◆安藤俊介(あんどう・しゅんすけ)一般社団法人日本アンガーマネジメント協会代表理事。アンガーマネジメントの日本の第一人者。教育現場から企業まで幅広く講演、企業研修、セミナー、コーチングなどを行っている。米国のナショナルアンガーマネジメント協会では最高ランクのトレーニングプロフェッショナルに、アジア人でただ1人選ばれている。書籍は台湾、中国、韓国でも翻訳をされ、累計40万部を超える。
◆渡辺陽(わたなべ・よう)大阪芸術大学文芸学科卒業。「難しいことを分かりやすく」伝える医療ライター。医学ジャーナリスト協会会員。フェースブック(https://www.facebook.com/writer.youwatanabe)