ゴーン被告保釈の背景に「特捜部の無謬神話崩壊」須田慎一郎氏が指摘
日産自動車に対する会社法違反(特別背任)などの罪で起訴された同社の前会長カルロス・ゴーン被告(64)が6日、昨年11月の逮捕から108日目で勾留先の東京拘置所から保釈された。東京地裁は前日に保釈を認める決定を下し、東京地検が不服として準抗告を申し立てたが退けられた。ジャーナリスト・須田慎一郎氏はデイリースポーツの取材に対し、保釈の背景にある2点を指摘した。
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メディアでは裁判所が「異例の対応」をしたとしているが、私は必ずしも“異例”とはみていない。「容疑事実を否認している者の保釈は証拠隠滅につながってしまう」ということが、立件、起訴するサイドの主張ではあるが、裁判所は起訴する側の都合を認めなかった。
なぜか。証拠隠滅の恐れについては、司法取引によって、日産サイドの全面的な協力を得て証拠が提供される中で逮捕につながった。従って、保釈されても、証拠隠滅されるようなものはない。
むしろ、長期勾留についていえば、自白の強要がなされ、冤罪の温床になるという指摘もある。裁判所は、証拠隠滅の恐れと長期勾留の弊害を天秤にかけて保釈に至ったと考えられる。
メディアでは「外圧に屈した」「国際世論に配慮」という論調もあるが、今回の件は、地検特捜部の「無謬(むびゅう)神話」が崩壊したことを意味する。つまり「間違いを起こさない」という神話が壊れたということである。
2010年9月には大阪地検特捜部が証拠物件のフロッピーディスクを改ざんするという前代未聞のケースがあった。翌年には東京地検特捜部が虚偽の事実を記載する不祥事もあった。特捜部へのイメージはかつてのものとは違っている。「特捜部も過ちをする」という見方が背景にあるのではないか。
今回の保釈についてまとめると、(1)証拠隠滅をはかる土壌がない、(2)特捜部の無謬神話の崩壊という2点がある。仮に、ゴーン被告が無罪になるとすれば、特捜部は立ち直れないことになり、解体に結びつく。それだけに、今後の動向が注目される。