新井浩文被告 強制性交罪で起訴、なぜ保釈に…「行列」北村晴男弁護士に聞く
自宅で派遣型マッサージ店の女性従業員に乱暴したとして、強制性交罪で起訴された俳優の新井浩文被告が2月末に保釈された。ネット上では「自分が被害者なら恐怖を感じる」と保釈に疑問を持つ声も散見された。裁判所はどのような過程を経て保釈を決定するのか、日本テレビ「行列のできる法律相談所」に出演する北村晴男弁護士に尋ねた。
北村弁護士は、裁判所が被告人を保釈するかしないか決定するに当たって最も重要視することとして逃亡の恐れがないこと、証拠隠滅の恐れがないことの2点をあげた。
逃亡の恐れについては、住所が明確であることや身元引受人がしっかりしているかどうかを判断する。証拠隠滅の恐れについては、被告人が起訴事実を大部分認めていれば「隠滅の恐れは格段に低い」と裁判所は判断するという。
逃亡のおそれについてはそれ以外に、被告人に下されるであろう判決も考慮する。執行猶予となりそうか、あるいは実刑となりそうか、実刑ならどの程度の長さになるかを見極める。執行猶予が十分に見込めそうであれば、被告人の心理も「逃亡」の方向に傾きにくいと考え、保釈が認められやすい。
実刑の可能性が高そうな場合でも長くて1年程度であれば、「逃げたい」という心理もかなり減ると裁判所は考え、保釈に傾くことが考えられるという。しかし、例えば5年を超えるような実刑が考えられる場合であれば、被告人の心理として「刑務所に入りたくない。逃げたい」という方向に傾くことが考えられる。こういった場合は「逃亡の恐れがある」として保釈されにくいという。
保釈は刑事訴訟法で規定されている。89条では権利保釈(必要的保釈)と呼ばれる制度について明記され、「保釈の請求があったときは次の場合を除いては、これを許さなければならない」として6項目が示されている。最初の項目では「被告人が死刑または無期もしくは短期一年以上の懲役もしくは禁固に当たる罪を犯したものであるとき」となっている。
つまり、例えば殺人罪に問われた被告の保釈は容易には認められない。新井被告が問われた強制性交は刑法177条によって「5年以上の有期懲役と処す」となっており、やはり保釈は容易ではなかったとみられる。
これについて北村弁護士は「裁量保釈によって認められたものです」との見解を示した。裁量保釈(職権保釈)は刑事訴訟法90条にあり、「裁判所は、保釈された場合に被告人が逃亡しまたは罪証を隠滅する恐れの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上または防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認める時は職権で保釈を許すことができる」とある。
保釈されるにあたっては保釈保証金を納付することも必要だ。新井被告は500万円を納めた。96条には、保釈の取り消しや保釈保証金が没取される場合の被告人の行為について「住居の制限その他裁判所の定めた条件に違反したとき」などと列挙されている。新井被告はこれらに該当する行為を厳に慎まなければならない。
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北村晴男(きたむら・はるお) 弁護士。長野県出身。日本テレビ系「行列のできる法律相談所」にレギュラー出演。趣味はゴルフ、野球。月2回スポーツなど幅広いテーマでメールマガジン「言いすぎか!!弁護士北村晴男 本音を語る(まぐまぐ)」を配信中。