スピンオフ止まらぬ「水を吐くフグ」 次は急須に?撮影した“左党記者”はいま
「ブシャアア」?いや、フグだけに「ふぐぅっ」?パンパンに膨らんだ丸い体から勢いよく水を吐き出すフグ。東京新聞のツイートをきっかけにフリー素材サイト「いらすとや」のイラストやネタ動画になるなど人気を集めるフグの写真を、今度は福岡県の陶芸家が急須にアレンジし、そのツイートも話題になっています。拡大止まらぬこのフグ、そもそも誰が撮ったの?ということで、取材してみました。
きっかけは今月10日に投稿された、「秋田県の会社が岩手県雫石町で、温泉水を使って無毒なトラフグを養殖している」という記事を紹介するツイートでした。敵(人間)を威嚇するため水をいっぱいに吸い込んだフグが、手の中で勢いよく水を吐きだす姿に「画像の破壊力やばい」「マーライオンならぬマーフグ」などリツイートが殺到し、29日までに8万3千件を超える「いいね」が寄せられました。
さらに投稿から間もなく、ゲーム開発者がフグを3D化した動画を公開。「いらすとや」のイラストのほか、フグをモデルにしたさまざまなイラストや作品が投稿されるなど人気が続いています。24日には福岡県の若手陶芸家、川原直樹(@Karesansui_CW)さん(25)が「急須を作りました。その名も“お茶を吐くフグ”です」と写真とともにツイートしたところ、1万2千件のリツイートが。「実物に寄せすぎるとゴボッて吐いちゃうんですが、それは急須としてどうなのかという…。微妙なさじ加減が難しくて」とのことで、商品化に向けて鋭意改良を続けているそうです。
その写真を撮った人はさぞほめられただろうと探したところ、行き着いたのは、東京新聞など地方紙などに記事を配信している共同通信盛岡支局の加我晋二記者(26)。今は岩手県庁を主に担当しているそうです。まさかのバズりっぷりに、支局長曰く「フグのような顔をして驚いていた」そうですが…。
-渾身の1枚ですね!
「いえ、実はこのネタは地元紙の岩手日報さんが先に記事にしていて、面白いなと思って取材に行ったんです。ええ、いわゆる『抜かれ』の『追っかけ』取材です。養殖場の人に水をパンパンに飲むと、水から揚げただけでブワアアって水を吐いちゃうと教えてもらって。個人的にそれが面白くて、2、3回やってもらって何十枚と連写したうちの1枚です」
-これだけ話題になったんですから、社内表彰とか…
「いやいやいや、全然ないです。そもそも、配信前に写真部に見てもらったところ『水が入ってないところの方がいいんじゃない?』と差し替えるよう言われたんです。ただ、うまく撮れているのがあの写真しかなくて。子ども新聞向けにやさしめの記事にして配信し、それを東京新聞さんがツイートしてくれたんですが、こんなことになるとは…。養殖場の方からは何度かお礼の電話をいただきました」
-しかし、このアングルにこのタイミング…フグ愛にあふれてますね。
「それが、生きたトラフグをあんなに間近で見るのも、水を吐くのを見るのも、あの取材が初めてだったんです。でも、東北にはフグを食べる文化がなくて、あの写真をきっかけにフグを多くの人に食べてもらって、東北の発展につながったらと思います」
ちなみに加我記者はお酒好きだそうで、盛岡支局勤務になってからはビールに加え日本酒もたしなむようになり、正体をなくしたことも「そうですね…何度か…」と、もごもご。飲みすぎて不遇(フグう)なことにならないようにしてくださいね?(神戸新聞・広畑千春)