入社2日で退職も…女性専門の「代行」を利用する人たち
真新しいスーツに身を包んだ新入社員が闊歩する4月。だが、いざ研修が始まってみると、給料に待遇に仕事内容に「こんなはずじゃなかった」と辞めたり、会社に来なくなったりするケースもあるとか。悩む人事担当者を後目に「退職代行サービス」は急増。波風を立てたくないと我慢しがちな女性に特化したサイトも登場し、入社から比較的日が浅い人を中心に、相談が寄せられているという。
「男性に比べ女性は、強気な上司に言い出せなかったり、職場の人手不足や人間関係の悪化を心配したりして、辞めたくても言い出せない人が比較的多いのでは」と話すのは、ウェブメディア運営「インクル」(東京都)の運営する女性特化型退職代行サービス「わたしNEXT(ネクスト)」の担当者。退職代行を行う会社はここ数年急激に増えているが、男性向けが多かったといい、「女性でも頼りやすい窓口を」と今年3月にサイトを立ち上げた。
ホームページやLINEアカウントから申し込み、無料相談にも応じる。退職を希望する場合は、勤務先の会社名と電話番号、人事担当者の名前、さらに退職理由や有休消化などの条件のほか、「始業前」「終業後」といった希望の時間を伝えれば、専門スタッフがその時間に電話をかけ、辞意を伝達。人事担当者から必要な手続きを聞き取り、依頼主に伝えてくれる-という仕組みだ。「あくまで、口頭での連絡係。交渉や書類のやりとりは一切しない」というが、これまで会社側から慰留されたことはないという。
依頼者は20~30代が9割を占め、入社数カ月以内の短期の人が多く、入社2日の新入社員や、新卒採用の人もいるという。「当初聞いていた条件と違っていた」「営業の仕事はないと言われていたのにさせられた」「給与や勤務時間など条件面で合わなかった」などの理由が多く、中には「家族が病気で倒れて働けなくなった」というケースもあったという。
まっとうな理由なら、自ら辞意を伝えてもいいように感じるが、「何も言わずにいなくなる人もいる中、利用されるのは他人にお金を払ってでもきちんと辞意を伝えたいという、とてもまじめな方ばかり」と担当者。「研修期間中なのに申し訳ない」「人間関係ができていない中で言い出しづらい」と引け目を感じ、言い出せないまま悩み続けていた例もあり、「退職できてとても感謝され、こちらもうれしいですね」という。退職できなかったときの全額返金システムや、提携した人材紹介会社を通じて転職した場合のお祝い金もあるという。
退職代行サービスはブームに乗って業者も増加。費用も弁護士による交渉ができるかどうかなどサービス内容によって値段が大きく異なり、正社員・派遣社員は2万円台後半から10万円、パート・アルバイトでは1~5万円とも。ただ、弁護士にのみ許されている交渉をする「非弁行為」が横行しているとの指摘もあり、「代行」選びも、じっくり見定める必要がありそうだ。(神戸新聞・広畑千春)