寿司とネタの魚たちを同時展示 タブー破った水族館の熱量が半端ない

 「今日はお寿司にしようかな」と考えている方は、見ない方がいいかもしれない。そもそも、海の生物を保護する水族館でなぜ…。寿司とネタの魚たちを一緒に展示する名古屋港水族館(名古屋市)の企画展が、「サイコパスぎりぎり」と話題を呼んでいる。職員自ら調理を手掛けた創作寿司も並び、かなりグロテスクな珍味まで。これだけ攻めたのには深い意味があった。

 企画展はその名も「寿司ネタ大集合~水族館が斬る!寿司のいろいろ~」(6月2日まで)。寿司ネタを扱ったのは27年の歴史で初めてといい、「これまで魚やウミガメ、ペンギンなど愛らしさや不思議さなどをクローズアップした企画をしてきたんですが、やり尽くした感があり、タブーを逆手に取ってみたら面白いかも?と半分勢いで企画しました」と担当職員。のれんをくぐると六つのコーナーがあり、マダイやシマアジ、スズキなどが泳ぐ水槽の前にはおいしそうな寿司のレプリカが。ホタテの寿司を、世界最大の二枚貝オオシャコガイ(絶滅危惧種!!)で作ったら何貫できる?-など、「いたって真面目に制作した」という展示が並ぶ。担当チームは飼育歴10年以上のベテランばかりといい、海の生物への愛も深く、添えられた解説文には「カワハギはおちょぼ口でユニークな動きですが、実はほかの魚のヒレをかじる厄介者」など「ネタ」たちの生態を熟知しているからこそのトリビアが記されている。

 極めつけが、職員自ら魚たちを「斬った」創作寿司。中でも「ゆむし軍艦巻き」はなかなかの衝撃度だ。ゴカイの仲間で体長10~30センチのユムシは、干潟などの泥の中に生息し、釣りエサにも使われるが、解説文には「切った瞬間に赤黒い体液がドバっと出てきました…。ちょっとした衝撃映像のようでビビッてしまいました…(泣)」としつつ、「味は上品で臭みは一切なく、貝のような甘みがかみしめるごとに口に広がります」とか。

 今や子どもや若者を中心に、切身や寿司ネタでしか魚を知らない人もいるといい、職員は「これを機に、本来の姿に興味を持っていただけたら」と熱く語る。

 ついでに「ユムシ」について調べてみると、韓国や中国では一般的な食材として用いられているほか、国内でも北海道石狩市浜益では「ルッツ」と呼ばれる高級珍味とか。大しけの後には岩場に打ち上げられたユムシを求めて住民たちが集まるといい、「見た目はアレですが、赤貝に似たコリコリとした味でおいしいんですよ。年に数回しか食べられないごちそうです」(石狩市浜益支所)なのだそうだ。

 キレイにさばいた後のなら、お皿に盛ってくれたら、ぜひ一度食べてみたい。って、こんな私はやっぱり「愛」が足りませんか、名古屋港水族館さん…。

(神戸新聞・広畑千春)

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