もはや「黒電話」は歴史的史料?奈良県立民俗博物館の展示にネットどよめく

 「ついに黒電話の掛け方が、解説されるようになっていた!」

 フリーライターの林宏樹さん(@kyoto_sentolove)が4月9日にツイッターに投稿した奈良県立民俗博物館の展示が、大変な反響を呼んでいる。添付された画像には、黒電話の実物に「受話器を持ち上げてダイヤルを回します」と書かれた絵入りの説明パネルが。「博物館入りとはね」「自分が生きた化石になった気がした」「これでワイも歴史の生き証人」…。まさか自分が普通に使っていた道具が、歴史的史料として紹介され、あまつさえ、使い方を図解までされてしまうとは。林さんの報告が、アラフォー以上の世代に与えた衝撃の大きさは計り知れない。こんなことが許されていいのか。一路、奈良を目指した。

 問題の展示は、主に明治から昭和にかけての道具や家電など百数十点を集めた常設展「昔のくらし」にあった。「昔の道具にさわってみよう!」というコーナーの一角、炭火アイロンや洗濯板などの「仲間」として黒電話が鎮座。「1960年代に登場した電話。数字が書いてあるダイヤルの穴に指を入れて右へ回す。指止めの位置まで回したら指をはなす。これをくり返して番号を入力します」という解説と、先述した無邪気なイラストが設置されている。

 同館によると、この常設展が始まったのは2013年度から。子どもたちがダイヤルの穴を指で押したり、受話器を上げずにダイヤルを回したりするのに気づいた学芸員の茶谷まりえさん(30)が、良かれと思って使い方をイラストにしたという。

 昭和63年生まれの茶谷さん自身、黒電話は「教科書で見たことがある程度」。とにかく「昔の道具」という印象しかないそうで、炭火アイロンや洗濯板、もっと言うと飯びつや豆炭あんかなどと並んでいても全く違和感がないというのだ。

 同じく学芸員の溝邊悠介さん(37)は、まだ黒電話をぎりぎり覚えている世代。「自分が慣れ親しんだ家電が歴史的史料として扱われていることにショックを受ける皆さんの気持ちはよくわかります」と頷く一方で、こんなことも。「例えばもっと年配の方なんかは、それこそ飯びつや豆炭あんかなどを見て『なんであれが昔の道具なの?』と驚くんですよ」

 なんか騒いでるみたいだけど、黒電話は要するにそれと同じだよ…。君たちの幼少期、青年期はもう古い歴史の1ページになっているんだよ…。現実を受け入れた方がいいよ…。溝邊さんのそんな心の声が聞こえた気がしたが、もちろん気のせいである。気のせいであってほしい。(神戸新聞・黒川裕生)

▼奈良県立民俗博物館 http://www.pref.nara.jp/1508.htm

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