ドキュメンタリー映画公開のKEI氏が明かした少女自殺の背景とは
米国の刑務所を生き抜いた元暴力団員で、現在は作家や漫画原作者、ボランティア団体代表など幅広く活動するKEI氏(57)を追ったドキュメンタリー映画「HOMIE KEI~チカーノになった日本人~」が26日から東京・ヒューマントラストシネマ渋谷を皮切りに大阪などで全国順次公開される。それに先立ち、同氏はデイリースポーツの取材に対し、行き場を失った子供の現状を語った。
新宿・歌舞伎町の少年ヤクザから、20代半ばで金銭的な成功を収めるが、ハワイでFBIに逮捕されて米国の刑務所で10年以上も服役。殺人が絶えない所内で「チカ-ノ」と呼ばれるメキシコ系ギャンググループに受け入れられ、「家族」の在り方を見つめ直した。出所後、帰国してチカーノファッションを取り入れたアパレルブランドを立ち上げた。
映画では壮絶な生き様と共に、KEI氏が立ち上げたNPО法人「グッド・ファミリー」で子供たちと接する姿も描かれる。今年も「こどもの日」に、育児放棄された子供や母子家庭の子供らを招待して毎年恒例のイベントを神奈川県内のマリーナで開催。バーベキュー食べ放題やジェットスキーなどで遊ぶ。
その一方で、悲しい出来事もあった。生活をバックアップし、マリーナにも出入りしていた女子中学生が昨年、自殺したのだ。
8月28日、東京都八王子市の中学に通う永石陽菜さん(当時13)が走行中の電車にはねられ、数日後に死亡。部活動でのいじめをつづった遺書を残していた。市教委が「いじめがあった」と発表したのは11月。部活を休んだことに対し、上級生からSNSで批判され、同級生からも無視されるなどしたという。
KEI氏は、旧知の間柄だった父親に頼まれ、小学校高学年時から陽菜さんを神奈川県茅ケ崎市に引っ越させて生活を支えたが、中学から本人の希望で八王子に戻っていた。「3年生のいじめから始まり、全校生徒対1人という状態に。LINEなどネットいじめに遭った。『9月4日にマリーナでバーベキューやるからおいで』と誘ったら、『楽しみにしてる』と言ってたのに、西八王子駅で飛び込んだんです。親からの電話で集中治療室に駆け付けた時は危篤状態でした」と明かす。
教育現場でのケアは困難だと感じた。KEI氏は「先生はいじめがあると分かっていても、関わりたくない、ふたを閉めたいという状態。逆に生徒から暴力を振るわれている教師の相談を受けている。被害届を出すと『なに警察にチクってんだ』と殴られる。先生がそういう状態。3年間、あたりさわりなく出て行ってくれというスタイルです」と指摘。また、親についても「それ、おかしいよ」と注意するような行動があることを懸念した。
KEI氏は「5月5日を皮切りに、9月いっぱいまで子供たちにマリーナを開放します。好きな時に遊び、ご飯を食べに来るだけでもいい。親のストレスが児童虐待につながっている家庭の子供を土日だけでも自分が預かれば、お母さんはフリーになって、ストレス解消になるという効果があるので」。民間レベルで、できることから活動を続けている。(デイリースポーツ・北村泰介)