認知症の祖母→早急に退院の必要が! 老人ホーム紹介センターを利用して分かったこと
筆者は昨年11月末まで、30歳過ぎから6年間、認知症の祖母を在宅介護しました。その祖母は現在精神科病院に入院中です。先日、症状が回復したため退院を勧められ、老人ホーム紹介センターを利用するようになりました。
老人ホーム紹介センターとは利用者と施設を仲介する業者で、希望の施設を本人や家族からヒアリングし、条件にマッチした施設を探します。老人ホーム紹介センターを実際に利用して感じたメリットやデメリットを紹介していきます。
祖母は昨年11月末、介護老人保健施設(老健)に入所したものの、利用者に突然大声を出すなどの粗暴行為が続きました。落ち着かせるために老健の主治医が投薬をすすめたところ、意欲、食欲が減退し、あっという間に寝たきりに。そこで本格的な認知症治療に取り組むため、今年1月中旬、精神科病院へ転院しました。薬をほぼ使用せず、ケアに力を入れる方針のもと、寝たきりから回復することができましたが、あわせて急性期向けの病棟から出なければならなくなりました。
通常であれば併設されている療養病棟へ移りますが、建物が古いなどの問題があり、主治医からは「あまりオススメできない」とも言われました。そこで、早急にほかの病院か施設を探さないといけない状況になり、相談した地域包括支援センターから、老人ホーム紹介センターのことを紹介されたのでした。
■老人ホーム紹介センターの3つのメリット
老人ホーム紹介センターを利用することのメリットは、主に3点あると感じました。
(1)自宅まで無料で出張訪問
私が老人ホーム紹介センターに「情緒不安定で粗暴行為がありますが、月12万以内で入れる施設か病院はありますか?」と聞いたところ、相談員から「紹介できる施設が数件あります。自宅へ行ってもよろしいですか?」と連絡があり、数日後、50代ぐらいの男性相談員が私の自宅までやってきました。無料で自宅まで訪問してもらえるのは、仕事、介護、育児などで忙しくする利用者にとってありがたいサービスです。
(2)居住地域外の広域な老人ホームの紹介が可能
私の自宅へ訪問してきた相談員は、祖母の自宅から片道30分~1時間程度の老人ホームを3件リストアップ。その中には、1階にデイサービスが併設、2階、3階は寝室があり、月8万円(オムツ・パッド・日用品は別)の施設がありました。デイサービスが併設され、リハビリやレクリエーションが活発なのは、祖母が少しでもADL(日常生活動作)を維持できるのに適していそうな施設でした。
その施設は居住地域外にあり、ケアマネージャーや役所からは紹介をうけていませんでした。老人ホーム紹介センターの相談員が広域な情報をカバーしていることを知りました。
(3)相談員が見学・同行・契約まで無料サポート
私が施設の見学や面会を希望すると、相談員は「今から連絡をとります」と、すぐに老人ホームの担当者へ連絡し見学日時を決めました。老人ホームへの見学にも相談員が同行し、一緒にいろいろ話を聞いてくれるそうです。その上で契約をするかどうかを決められるというのは、介護者にとって強い見方といえるでしょう。
■民間の施設のみ紹介 一方的に案内されることも
老人ホーム紹介センターは介護者にとって強い見方になる反面、注意しなければならないところとして下記の2点を感じました。
(1)民間の施設紹介のみで費用は高めの施設を紹介されるケースも
ほかの老人ホーム紹介センターに相談した時、月11万の民間老人ホームの紹介をうけました。祖母の自宅から近所にあり、過去見学をしたことのある特養と同じくらいの金額とサービス内容に感じ、「(近所の)特養とサービス内容に変わりはありますか?」と聞いてみると、相談員は「変わりません」と返答。そこで「ほかに特養はご紹介いただく予定のリストにありますか?」と聞くと、「居住地域外でも今すぐ入所したい方に、民間施設のみを案内しています。公的な施設は紹介していないんです」とムッとした表情で言われました。
後で調べると、老人ホーム紹介センターは有料老人ホームやサービス付高齢者住宅など、民間の老人ホームのみを紹介するところで、特養や老健など公的な施設の紹介は厚生労働省から禁止されていることを知りました。相談員が不機嫌になったのは民間の施設のみの案内になるのを知られたくなかったのかもしれません。
特養や老健など公的な施設は、原則要介護3以上の人が対象ですが、入居金が無料です。その分入所を待つ人が多く、数カ月から数年待つことも珍しくありません。一方、有料老人ホームなど民間の施設は要介護1から対象と、入居できる人の幅が広いですが、入居金が必要な上、公的な施設と比較して費用が高めなこともあり、特養と比べると入所を待つ人は少なめです。一般的に、特養と比べて月3~5万程度割高の民間の有料老人ホームを比較した場合、サービス内容にそれほど変化がないと言われています。
ですので、費用面を極力抑え今すぐ施設を探さなくていい場合は、選択肢は狭いですが公的な施設を紹介するケアマネージャーや役所がベストです。一方、若干割高であったり居住地域外であっても、今すぐ施設を探したい場合は、老人ホーム紹介センターを選択肢に加えるといいでしょう。
(2)本人や家族の意向を十分ヒアリングせず一方的に案内することも
私の知人は月額利用料をなるべく抑えたくて、特養か老健を希望し、ある紹介センターに相談しました。
すると、訪問してきた相談員は「特養は医療行為に制限があるので、将来的に胃ろうや点滴が必要になれば施設を変わる必要がある」と言ったそうです。
前述したとおり、老人ホーム紹介センターは特養を紹介できません。しかしそのことを相談員は説明していません。さらに、半分程度の特養では胃ろうや点滴といった医療的ケアをしていますが、事実と違う説明をした上、希望より5万円近く割高の民間の有料老人ホームを紹介したといいます。
老人ホーム紹介センターは、施設から紹介料をもらって経営するビジネス形態のため、付き合いが長かったり紹介料が高かったりする施設を優先的に紹介するケースがあります。強引に契約をしようとする業者もいますので注意してください。
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老人ホーム紹介センターは相談、自宅出張、施設紹介、面会・見学同行、契約まで一貫して無料です。一方で公的な施設の紹介はなく、民間の施設のみの紹介で一般的に費用面が高い施設を案内されます。
また、本人や家族の意向を十分にくまなかったり、センターに都合のよい施設を無理やり紹介するケースもあります。
しかし、祖母が施設へ入所し、3カ月半で3カ所目の施設を探している筆者からすれば、素人が本人に適した施設を探すのは、なかなか容易ではないと実感しています。筆者のようにお困りの方もいると思いますので、メリットとデメリットを知った上で上手に利用することをオススメします。
(まいどなニュース特約・奥村シンゴ)