ポツンと道路にいた子猫、保護先は動物が苦手な家庭だった

 どんなに動物が好きで、困っている動物を保護したくても、一緒に暮らす家族の同意なくしては動物を幸せにするのは難しい。しかし、都心部ほど交通量が多くなくても、道路にいる子猫を放置しておくことはできない。子猫を発見した人は、とるものもとりあえず保護して連れ帰った。

■ポツンと道路にたたずんでいた子猫

 2015年9月、ちろるちゃんは、子猫の時、道路にポツンといたところを保護された。明石さんのご主人は、長崎県にある実家で医院を開業しているのだが、その医院の職員が発見したのだ。母猫や兄弟は見当たらず、たった1匹で道路にたたずんでいたのだ。

「このままではひかれてしまう」、そう思った職員は、いったん自宅に子猫を連れ帰った。ただ、義理の両親と一緒に暮らしていて、その義父母は動物があまり好きではなかった。1日、2日は隠して面倒を見たが、それ以上は育てられない。困った職員は、誰かもらってくれないだろうかと勤務先の医院で相談した。

 院長の明石さん(仮名)は、夫婦で何匹もの猫を保護して飼っているほど猫が大好き。困っていて、しかも可愛い猫を一度見てしまったら放っておけるはずがない。

■自己主張の激しいちろるちゃん

 ご主人は、子猫の里親になる決心をして、自宅に連れ帰った。名前は、ちろるにした。

  明石さん宅には他の猫もいたので、まずは、ちろるちゃんをケージに入れたのだが、ケージに入れると、とにかくきびすかましくニャーニャー鳴いた。「出して、出して、出して~」と言うのだ。あまりにも何度も出してコールをするので出してあげると、今度は「遊んで、遊んで、遊んで~」と言う。ちょっと放っておけば静かになるだろうと思っても、そんなもので納得する気配もない。

 「子猫のちろるちゃんを納得させるのは、結構大変でした」

■猫に対しては遠慮気味

「出して」とか「遊んで」とか、はっきり自己主張するちろるちゃんだが、猫の世界の掟は別のようだ。ちろるちゃんは、他の猫とも遊べるが、ちょっと控えめな態度なのだという。

「人に甘えたくても、他の猫に遠慮するんです。甘えて擦り寄っていても、他の猫が来るとサーッといなくなってしまいます。ちろると一緒に遊んでいても、他の猫が来ると、ちろるが我慢して他の猫に譲ってあげる感じです」

 明石家では置き餌をせず、みんながお腹をすかせて集まってきた時にご飯をあげるのだが、ちろるちゃんは、最初にさっと食べてパッといなくなる。しかし、人間には自己主張するので、お腹がすいたら足元にくっついて「ご飯」と要求することもあるそうだ。決して我慢はしていない。

  すくすく成長して3歳になったちろるちゃん。他の猫に少し遠慮してはいるものの、ちろるちゃんだけの楽しみもある。お嬢さんの洋服にくるんでもらって、暗くして、抱っこしてもらって眠るのだ。

(まいどなニュース特約・渡辺陽)

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