深夜のカラオケボックスの中で発見された子猫、運命の人のもとへ

 カラオケボックスの機械の中にいた5匹の子猫たち。なぜそんなところにいたのか分からないが、2匹の子猫だけは、生命力が強かったのか、なんとか命をつなぐことができた。

■閉店後のカラオケボックスから子猫の鳴き声が!?

 2016年、日暮れの時刻が早くなり、秋の気配が感じられる季節、閉店後のカラオケボックスの機械の中から、かすかに猫の鳴き声が聞こえてきた。保護主さんは、「こんなところにまさか!?」と思ったが、闇夜の静寂の中、ニャアニャアという鳴き声が確かにする。懐中電灯の明かりを頼りに機械の中をのぞいてみると、そこには5匹の子猫がいたという。

 1匹は既に息絶えていて、もう1匹もレスキューしている最中に死亡。保護主さんは、3匹の子猫を保護団体のワンハート大阪に託したが、その後、1匹の子猫が亡くなり、2匹の子猫だけが助かったという。

 なぜか5匹のうち2匹は油にまみれていて、便にも油が混じっていた。誰かがカラオケボックスの機械の中に捨てたと考えられているが、母猫が暖かい場所で出産した可能性もあるそうだ。

 保護主さんが獣医師に診せると、生後数週間ということだったが、子猫たちがあまりに小さかったため、そう見えたようだ。ワンハート大阪のかかりつけの獣医師は、歯が生えているので、おそらく生後1カ月くらいではないかと診断した。

■忘れられない猫、でんちゃん

 京都府内に住む今枝さんは、猫を飼おうと思っていたわけではないが、スマートフォンを触りながら、「保護猫 関西 女の子」と検索してみると、カラオケボックスで保護された子猫が出てきて目に止まった。その子が、後に今枝さんの家族になるでんちゃんだ。

 以来、今枝さんは、でんちゃんのことが頭から離れず、ワンハート大阪のブログにでんちゃんが載るのを楽しみにするようになった。いままで犬しか飼ったことがなく、しずくちゃんもいるので、実際に飼おうとは思わなかったが、とにかく気になって仕方がなかった。

 どうしても忘れられない。2017年3月、でんちゃんがワンハート大阪の譲渡会に参加することになった時、今枝さん夫妻はでんちゃんに会ってみることにしたという。

■本当に猫を飼えるのか、心配だった理由

 今枝さんは、でんちゃんに会う前から思いが募るばかりだったが、じつは、猫を飼うのをためらうのには理由があった。

 今枝さんは、いままで犬しか飼ったことがなく、長年一緒に暮らしている、マルチーズとチンのミックス犬“しずくちゃん”(10歳・女の子)との相性も心配だった。

 加えて、今枝さんは、猫アレルギーが陽性なのだ。猫を飼っている人の家に行くと、まぶたが腫れたり、鼻水やくしゃみが出たりする。

 「本当に猫を飼って大丈夫なのか、ずいぶん悩みました。でも、アレルギー症状が出たら、私が治療すればいい、何かあってもなんとかなると思ったんです」

 でんちゃんとのお見合いから1ヶ月後、2017年4月にでんちゃんは、今枝さんの家族になった。アレルギー症状は出ていない。

 でんちゃんは、警戒心が強いのか、最初は、用意していたダンボールハウスにこもっていることが多かった。でんちゃんに興味を持って近づくしずくちゃんのことを「シャーシャー」と威嚇することもあったが、だんだんお互いに慣れて、でんちゃんがしずくちゃんのことを遊びに誘うようになった。しずくちゃんは、でんちゃんが被っている帽子を噛んで引っ張ることもあるが、でんちゃんが怒ることもない。2匹はまるで昔から一緒に暮らしているかのように仲良しなのだ。

 「でんちゃんは、普通に歩いていて足を踏み外したり、夢中で遊んでいて急に眠ってしまったりするんです。見ていると飽きることがありません。最近、私にも甘えてくれるんですよ」と、今枝さんは幸せそうに話す。(まいどなニュース特約・渡辺陽)

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