スーパー駐車場で保護された子猫 トライアル中に脱走も20時間後に帰宅
容赦なく日光が照りつけ、残暑が厳しい日だった。大阪府内のスーパーマーケットでは、駐車場に出入りしている野良猫を駆除するために捕獲器をしかけていた。捕獲されたのは、2匹の黒猫の子猫。たまたまその場に居合わせた保護主が、「その猫たちをどうするのか」と問いかけると、店員は「近くの大きな公園に放しに行く」と言う。
守ってくれる母猫もおらず、食べ物もない、そんな環境で野良猫の子猫が生き延びることは至難の技だ。保護主は、子猫を引き取って、動物病院で診察してもらい、保護団体ワンハート大阪に託した。2匹は、「ぎょう」くん、「むー」くんと名付けられ、預かりボランディアのもとで育てられた。
■警戒心の強い子猫たち
2匹は、子猫だったが警戒心が強く、なかなかなつかなかった。おやつを与えたり、オモチャを使って遊ばせているうちに少しずつ心を開き、むーくんは、人の膝に乗ってくるまでになったという。ただ、譲渡会に出すと、ケージの隅っこでうずくまってしまっていた。
大阪府内に住む平松さんは、家族でTNR活動をするほどの愛猫家。1年半前にも白猫のブランちゃんを同じ保護団体から迎えていた。ちょうど2匹目の猫を探していたところ、ブログに掲載されていたむーくんとぎょうくんを見つけ、2匹を家に連れてきてもらった。生後9カ月になっていたむーくんとぎょうくん、先住猫のブランちゃんがいたので、まずはハーネス(首輪)をつけての対面となった。ブランちゃんは、興味津々だったという。
「ぎょうくんは緊張してソファの陰などに隠れたがったのですが、むーくんはパーカーでくるむようにすると、抱っこさせてくれました。迷いましたが、むーくんのトライアルを始めました」
■まさかの脱走!
むーくんは、ルナくんという名前になり、平松家の子になった。ルナくんは当初、ケージにこもったまま、ご飯も食べず、水も飲まなかった。平松さんは心配になったが、少しずつルナくんを環境に慣らしていったという。
「背中をなでると、小さくゴロゴロと喉を鳴らすのも可愛いと思いました」
ところが、トライアル中にルナくんが脱走してしまった。
「いつでも帰ってこられるように、窓を全部開けて帰りを待ちました。ワンハート大阪にも連絡したのですが、自分で入ってくるのを待つように言われました。道にルナの臭いがついた猫砂を撒いたりして、約20時間後に帰ってきました」
「自分の家はここだ」と思ったのだろうか。それでも、しばらくは相変わらずケージに引きこもりがちだったという。家族に優しく見守られるうちに、少しずつ心を開いていったルナくん。まるで脱走事件などなかったかのように、ブランちゃんとも仲良くなり、すっかり平松家の一員になっている。
(まいどなニュース・渡辺陽)