畳の縁でネコちゃんがくつろいでる! 斬新デザイン話題…伝統破ったメーカーの思いは…

 肩肘を付いて横になってみたり、眠たげにお腹をかいてみたり、なんとも気だるげなネコの絵が施された畳縁がSNS上で「おしゃれ過ぎる」「表情がたまらん」「うちの家にも使いたい」と話題になっています。となると、ネコ話題に占拠されがちなまいどなニュースとして放っとく訳にはいかへんニャろ!ということで、メーカーを直撃しました。

 この畳縁を作っているのは、岡山県倉敷市にある「高田織物」。かつて畳の原料となるい草の一大生産地だった岡山の、さらにジーンズに代表される織物産地・児島の地で、1892(明治25)年に創業した畳縁のトップメーカーです。現在手掛けている畳縁の柄は1000種類以上に上り、カタログにない特別注文にも応じています。

 そんな老舗が、伝統を打ち破る商品を出したのは、1991(平成3)年のこと。元々は古典柄で渋い色目のものばかりでしたが、社長の提案で、寿司屋の湯飲みに書かれた魚の漢字などの『居酒屋の青春』シリーズや、紅白の地にだるまや招き猫を描いた『開運福太郎』など5シリーズを初めて制作したそうです。

 「発表した当時は、大変話題になりました」と話すのは同社の担当者。かつて住宅に和室があるのは一般的で、建築業界でも畳に個性を求める雰囲気はなかったといいます。職人も男性ばかりで、畳縁は濃く渋いものが好まれていたこともあり、「一石を投じたかった」と話します。

 風向きが変わったのは、2000年代に入ってから。生活スタイルの変化で畳が売れなくなる中、畳店側も女性の視点を意識し始めるようになり、かわいくて明るい色目が注目されるようになったとか。さらに、大きかったのがハンドメイドへの活用でした。

 「畳だと、意識するのは一生のうち家を建てるときなど1~2回。小物なら違う種類をいくつも楽しめ、かわいい柄にもどんどん挑戦できる」と担当者。今回話題になったネコ柄は2009年に生まれましたが、これも御年70歳手前という社長のアイデア。今ではボタニカル柄や水玉、幾何学模様…と広がり、キティちゃん柄も登場した2014年にはファクトリーショップ「フラット」をオープンさせ、取り扱いは全国に広がっています。

 とはいえ、本来の畳縁としての売れ行きはやはり古典柄の方が多いのだそう。実際、岡山市内の40代の畳店主は「変わった柄を選ぶのは、カフェなど飲食店やペットショップがほとんど。一般家庭だと、ネコ好きの人が肉球柄の畳縁を選ぶぐらいで、やっぱり無難な色柄を、という人が多いですね」と打ち明けます。かわいいものは子ども向けイベントやプレゼント用に使う程度と言いますが、「今、業界は市場縮小と職人減の二重苦。でも畳の良さが見直されているのも感じる。おしゃれな畳縁をデザイン性が高い正方形の琉球畳や格子織の畳表と合わせるなど、新しい世界が広がるかも」と期待を込めます。

 こうした声に担当者の方は「伝統は伝統で大切にしながら、いろんなニーズにこたえ、畳や畳縁の楽しさ、可能性を提案していけたら」。かくいう記者も、畳にゴロ寝&い草の香り大好き派。さらにこれからは、畳縁にネコがいないかもチェックします!(まいどなニュース・広畑千春)

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